表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第四章 賢治の十二月二十六日~十二月二十八日
97/130

097.剥く

 「これは置いとけば? 祖父ちゃんのだろ?」

 マー君が、埃塗(ほこりまみ)れのトロフィーをゴミ山から引き抜いた。

 トロフィーには、人の目玉に虫の足が生えた雑妖(ざつよう)が、びっしり(たか)っている。って言うか、トロフィーから湧いてる。

 俺は全力で首を横に振った。

 ツネ兄ちゃんとノリ兄ちゃんも、顔が引き攣ってる。

 「政治(まさはる)、それ、雑妖の発生源」

 ノリ兄ちゃんが言うと、マー君は無言でゴミ山に投げ込んだ。

 三枝(さえぐさ)さんが、ノリ兄ちゃんに近付こうとした雑妖を魔法で消す。


 双羽(ふたば)さんが各部屋の丸洗いを終えて、汚水を連れて出て来た。ゴミ山に汚れを捨てて、再び中へ。

 魔法使い以外の五人で、選別を続ける。

 ノリ兄ちゃんが、ゴミを灰にする。

 俺達は、売る物と送る物を分けながら、送る物の過剰包装を剥いた。

 小銭がぎっしり詰まった一升瓶を十一本、発掘した。これは、祖母ちゃんの郵便貯金の口座に入金する事にした。


 「昼飯できたぞー」

 コーちゃんと政晶君が、農道を走って呼びに来た。


 もうそんな時間か。七時頃から作業を始めて、今、十二時過ぎ。

 五時間ちょい。


 タオルと洗剤をペットNPOに贈る事を伝えると、コーちゃんは超笑顔で言った。


 「じゃ、俺、箱詰めと宛名書き、手伝うよ。そんくらい、いいだろ?」

 「いいのか? 受験生。情報で助かったし、無理しなくていいんだぞ」

 「無理じゃない。息抜きだよ。息抜き。それに俺も身内なのに何もしないとか、なぁ?」

 最後は政晶(まさあき)君に言った。


 「分家で作業する分には、危なないんちゃうん?」

 政晶君が、商都弁(しょうとべん)でノリ兄ちゃんに聞く。みんなが色々頑張っているのに、自分だけ何もしないのは、気が引けるのだろう。


 ノリ兄ちゃんは、母屋を視て、屋敷神様の方を視て、政晶君に視線を戻した。

 「いいんじゃない?」


 軽トラにタオルと洗剤と小銭の瓶を積んで、俺は一足先に分家に戻った。

 ※同じ地方の人以外にとっては心底どうでもよさそうな方言の説明

 危なないんちゃうん?

 →危なくないんじゃないの?(特に危険性はないのではないのか?)

 発音を正確に表記するのはちょっと無理かも。

 「う」の部分は「ぁ」と「ぅ」の中間みたいな発音で最後の「ん」も半ば消失。


 政晶の商都弁にはモデル方言がありますが、歌道山町の方言にモデルはありません。完全フィクション。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ