095.想い
地上に降りた太陽の炎を見ながら、マー君が思い出を語る。
「巴の祖父ちゃんが買ってくれたんだ。三人とも同じの。母さんは経済と宗教には玩具買ってくれなくてな……」
お揃いの玩具は初めてで、三人とも大喜びだった。
巴の祖父ちゃんは、間違えないように足の裏に名前を書いてくれた。
経済はこの家を怖がってたけど、ヒーローをお守り代わりにして、少し落ち着いていた。
いつもみたいに怖がらないのが面白くなかったのか、単に欲しかったのか、ゆうちゃんが取り上げて隠した。
「……で、今頃になって見つけた訳だ」
思い出を語り終える前に燃え尽きた。
巴家のお祖父さんの「孫を思う気持ち」まで呑み込んで、雑妖の巣にしてしまった。
長男以外を蔑ろにする瑞穂伯母さんも、ゴミニートのゆうちゃんも、このゴミ屋敷も憎い。
「ケンちゃん、思い出は心の中にあるから、憎まないで」
ノリ兄ちゃんの声にハッとする。
危うく俺も呑まれる所だった。
「ケンちゃん、ありがとう。さぁ、早くゴミを捨てよう」
ツネ兄ちゃんの笑顔が痛々しく、悲しい。
怒りに任せてガンガン捨てる。
悪趣味な絵皿かと思ったら、雑妖の目だった。
絵皿も、何か入ってる生温かい雉の剥製も、人形もテレビの上の置物も、全部ゴミとして捨てた。
この世にお前らの居場所なんかない。あっちの世界に帰れ。