表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第四章 賢治の十二月二十六日~十二月二十八日
94/130

094.玩具

 何往復かして、応接間に戻ると、ツネ兄ちゃんがソファの前に蹲っていた。

 「ツネ兄ちゃん、どっか具合でも……」

 悪くなっても何の不思議もない。

 でも、違った。

 ツネ兄ちゃんは泣いていた。その手の中には、古ぼけたソフビ人形。

 懐かしの何とかって番組で、ちょっと見た事がある。俺が産まれる前の特撮ヒーローだ。

 丁度、ツネ兄ちゃん世代。

 よく見ると、ヒーローの足の裏にマジックで名前が書いてあった。


 経済(つねずみ)


 いかにもお年寄りっぽい達筆。ウチの年寄りの筆跡じゃない。

 ヒーローにも、雑妖が何匹も入っていた。

 どう見てもツネ兄ちゃんの持ち物だ。

 何とかしてもらえないか、双羽(ふたば)さんに相談しに行く。


 双羽さんは眉間に皺を寄せた。

 「(うつわ)を壊さずに、ですか……難しいですね」

 「子供じゃないんだ。俺が諦めさせてやる」

 マー君が応接間に向かう。ツネ兄ちゃんと鉢合わせした。

 「……焼いてもらう」

 「祖父ちゃんの字だけでも、撮っとく?」

 マー君がポケットからケータイを出す。ツネ兄ちゃんは首を横に振った。

 「これ撮ったら、百%心霊写真になる」


 ツネ兄ちゃんが、ゴミ山の上にヒーローを差し出した。

 「これも、焼いて欲しい」

 「うん、いいよ」

 でも、ツネ兄ちゃんの手は、ヒーローを握ったままだ。たくさんの小さな手や虫の脚が、ヒーローから出て、ツネ兄ちゃんの手を掴んでいる。

 ノリ兄ちゃんが、杖の山羊でヒーローの頭を軽く(はた)く。ツネ兄ちゃんの手から、ヒーローが落ちた。


 すぐにいつもの呪文で、たくさんのゴミと一緒にヒーローを火葬する。

 黒山羊の杖

 中央は全体像。右は上部、左は下部の拡大図。

 挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ