092.団欒
居間にゴミ袋があった。
何かと思って覗いたら、服だった。
ゆうちゃんは洗ってもらった後、放置してるんだ。
コメントする気にもなれない。
真穂がバスタオルを一枚、脱衣所の籠に入れた。
「ゆうちゃん、お風呂の入り方、覚えてるかな?」
「さぁなぁ?」
藍ちゃんが呼んでくれたが、ゴミニートは返事をしなかった。
すっかり暗くなった農道をゆうちゃん抜きで分家に向かう。
朝から分厚い雲が空を覆っていたが、何とか持ちそうだ。
そう言えば、ここ数日、日中は全然降らない。
夜中にまとめて降って、夜明け前には止んでる。
ひょっとして、屋敷神様……?
今夜はトンカツ定食っぽい晩ご飯。ノリ兄ちゃんだけ鶏雑炊。
叔父さんも農作業から戻って、ゆうちゃん以外、全員集合。
「ゆうちゃん、今夜もあんな所に一人なんだねぇ」
真知子叔母さんが、ラップを掛けながら言った。ゆうちゃんの分だ。今夜はマー君が本家に持って行ってくれた。
ちょっとは働いたみたいだし、まぁいいか。
「ゆうちゃんも発生源だから、居心地いいんじゃない?」
「ゆうちゃんのお部屋も、あんなに散らかってるの……」
ノリ兄ちゃんの返事に、叔母さんは溜め息を吐いた。
そう言う意味じゃない。
物理の汚部屋もだけど、ヘドロと雑妖の発生源なんだ。
それがわかるのは、ノリ兄ちゃんと、眼を借りてる俺だけだ。言っても不快なだけだから、俺は黙ってお茶をすすった。
「箱が傷んでても中身がキレイなら、ペットNPOが洗剤とかタオルとか、引き取ってくれるらしいよ」
コーちゃんがA4の紙を差し出す。
宿題の合間に調べてくれたのか。
「ありがとう」
「何か調べたかったら、どんどん言ってくれよ!」
お礼を言うと、コーちゃんと政晶君は目を輝かせた。
「ネットで遊んどらんで、勉強せいや」
「バレたか」
すかさず叔父さんが釘を刺す。
何となく面白くて、みんなで笑った。