091.倉庫
庭に出て、倉庫の物出しに参加する。
俺達が物を出す間、ノリ兄ちゃんはゴミを焼いてくれていた。
現役の農機は、畑の小屋に置いてある。
倉庫には、ほぼ壊れた物しかない。
部品を取ると言って、ジジイとオヤジが捨てない。その為の工具と農薬と肥料とプラ籠と手作業用の鎌や鋤が乱雑に入っていて、どこに何があるかわからない。
破れた筵、ボロボロのマルチ、ハウスの曲がったフレーム、壊れた発電機とかどうしようもない物も入っていた。
まず、壊れている物を全て捨てた。
それから、同じ種類の物を集める。
「現役の肥料とお薬は、畑の小屋にあるから、ここの口開いてるのは、捨てちゃおうよ」
真穂が言い、開封済みの物は全て捨てた。
ホントは農薬を捨てるのに面倒な手続きが必要だ。
今は、ノリ兄ちゃんに焼き尽くしてもらうから、気にしない。太陽の端っこの炎で、ダイオキシンが発生する余地もない。全て無害な灰になる。
工具は、同じ物が幾つも出て来た。錆びたり曲がったりしてるのは、捨てた。それでも複数残る。
どうせ、見当たらなくて買った方が早いと思ったんだろう。
無駄遣いする癖に、必要な出費は惜しむ。
家族の為に金を使わない。
学費も医療費も「勿体ない」の一言で切り捨てる。
農作業では、散々こき使われた。
ジジイとオヤジにとって、自分以外の家族は奴隷なんだろう。
たくさんの工具を見ているとイライラして来た。一番新しそうな物だけ一個ずつ残し、他は全て捨てた。
空になった倉庫を双羽さんに洗ってもらう。
工具を工具箱に納め、未開封の肥料と農薬、手作業用の農具、籠を種類毎に分けて、棚に収納する。
「倉庫って、こんな……広かったんだ」
「そうだな」
俺と真穂は、うんざりした顔を見合わせた。
ノリ兄ちゃんはゴミ焼き、ツネ兄ちゃんは、残った家電の動作チェック。
仏間と納戸にあった物で、使えそうな物を居間と隣の和室に置く。
それまでに発掘したバラのガムテープや紐も、ジャヌコでもらった段ボールに種類毎に入れた。
部屋の奥だと取りにくいから、廊下に近い場所に並べる。