090.二階
実家に戻ると、作業は大幅に進んでいた。
仏間は物が全部出て空っぽ。ちらっと見たら畳の一部は腐っていた。床板も心配だ。
ツネ兄ちゃんと藍ちゃんが、庭で選別作業をしている。
俺達は、買って来た物を家に入れた。
正式な設置は、畳替えの後。ひとまず居間へ。
真穂がゆうちゃんに「手伝ってくれてありがと」と言ったが、ゴミニートは無言だった。
やっぱ、ゆうちゃんも捨てないと、祖母ちゃんは幸せになれない。
仏壇はキレイになっていた。
ノリ兄ちゃんに言われて、双羽さんが洗ってくれたそうだ。
ホントなら俺達がしなきゃいけないのに、申し訳なさ過ぎる。
トイレの隣の部屋も空になっていた。ここは五畳くらいの板の間だった。納戸だろう。
三枝さんが、残っていた雑妖を斬っている。
二階に上がると、ゴミニートは戸を閉めて巣に籠っていた。
俺達は黙々と二階の廊下から、物を排除する。
部屋の戸を塞ぐ本棚には、古びた百科事典がぎっしり詰まっている。奥付の年代は、オヤジが子供の頃。内容が古過ぎて話にならない。
立派な事典や図鑑、全集が入っているが、読んだ形跡はない。
読んでちゃんと勉強していれば、あんな粗野で学のない大人になってない。
立派な本は全て、雑妖の苗床と化していた。
カラーボックス、段ボール箱、木箱……全部、内容を確認する必要もない。
三枝さんに軽くしてもらって、本棚ごと運ぶ。魔法で軽くすれば、真穂でも楽勝で運べる。
三枝さん、マー君、俺、真穂、クロエさんでバケツリレー的に二階の廊下をからっぽにした。
双羽さんが丸洗いしつつ、雑妖を退治してくれる。
本棚に埋もれていたのは、襖だった。
クロエさんが開ける。古い埃と一緒にヘドロと雑妖が、雪崩のように溢れた。
俺の目には物体が見えない。
視野いっぱいにヘドロと雑妖。
もうホントいい加減にして欲しい。
双羽さんと三枝さんが、天井を魔法で洗って雑妖を倒す。
霊感ゼロのマー君と真穂が、入口付近の段ボール箱を持って降りた。
空いたスペースを双羽さんが洗い、三枝さんがそこに流れ込んだ雑妖を斬る。
魔法使い二人には、魔法に専念してもらった。
俺達は、ひたすら物を外に出す。
ツネ兄ちゃんと藍ちゃんには、二階の物の仕分けは断り、倉庫の物を出してもらう。
二階の開かずの間は二部屋あり、どちらも和室だった。
中身は全て不用品。ガラクタや、何か憑いてる古い節句飾りや、箪笥だった。
ここも押入れに黴布団と終わってる座布団。アルバムは朽ちていた。
俺の部屋の物は、もう全部要らない。
今日、改めてゴミとして捨てた。
真穂は、元々少ない荷物の中から必要最小限だけ、ジャヌコでもらったキレイな段ボールに詰め、他は全て捨てた。
ゆうちゃんの部屋は本人にやらせる。