088.連行
三枝さんが、庭中に散らばった雑妖を斬り捨てて回る。
俺とツネ兄ちゃんで、昨日と今朝の灰袋を軽トラに積む。
真穂と藍ちゃんが、開けられるようになった窓と雨戸を開けに行く。
「ゆうちゃんの部屋のゴミ、多分、あれで全部じゃないかな? すみませんが、部屋の丸洗いお願いします」
マー君が言うと、双羽さんはクロエさんに何か指示し、水を連れて家に入った。
縁側に面した各部屋の障子は、破れてボロボロだ。雑妖とヘドロが縁側に流れ出ている。
親父の隣の部屋だけ、障子ではなく木戸だ。
マー君が、枠にへばりついた紙を剥がす。
ツネ兄ちゃんが仏間だと言った部屋は、枠の向こうに箪笥とかがぎっしり詰まっているのが見えた。
マー君は、障子紙が入ったゴミ袋を置き、家の奥に入った。
ゆうちゃんの部屋の雨戸が開いた。
灰を積み終わった俺とツネ兄ちゃん、ノリ兄ちゃんが見上げる。
ヘドロと雑妖が、外壁を伝ってドロリと垂れた。
まるで泥の糸。
ゴミ袋を被せた段ボールを抱えて、クロエさんが庭に出て来た。続いて、清水を連れた双羽さん。
それから、ややあって、マー君がゆうちゃんを引きずって来た。
真穂と藍ちゃんも出て来る。
俺は、軽トラにブルーシートを掛けた。
真穂がマー君の車の助手席に座る。マー君は、ゴネるゆうちゃんを力ずくで後部座席に押し込んだ。俺も軽トラに乗りこむ。
ショッピングセンタージャヌコへの案内看板の所まで先導し、俺はクリーンセンター、マー君の車はジャヌコへと分かれた。
クリーンセンターの受付のおっちゃんに顔を覚えられてしまった。
「よお。頑張ってるな」
そのたった一言が胸に染みて、ただただ頷いた。
すぐにセンターを出て、ジャヌコへ向かう。
クリーンセンターは、大勢の人の色んな想いがこびり付いた物がいっぱいで、息苦しかった。