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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第四章 賢治の十二月二十六日~十二月二十八日
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084.大金

 ツネ兄ちゃんがリサイクルショップについて来てくれた。お祖母ちゃんが暇だろうからって、洗浄してもらったアルバムを一冊持って、助手席に乗り込む。


 俺、気が利かない孫だなぁ。

 食事制限があるから、食べ物はダメだし、花も雑菌云々で禁止だし、何も持って行けねーって思いこんでた。


 リサイクルショップは、例の店長さんが対応してくれて、すんなり終わった。


 祖母ちゃんは、古いアルバムを見て大喜びだった。顔の周りの光が眩しい。

 「そのお金、二十年以上埋まってたが。ないも一緒じゃ。みんなのお小遣いにするがえぇが。大掃除のお駄賃が」

 あっさり好きにしろと言われて、俺は困った。


 二百万もどうやって……分家と(ともえ)家に百万ずつで、余りで要る物買うか?


 帰り途、ツネ兄ちゃんに相談した。

 「政治(まさはる)には、本人が言ってた分だけ渡せばいいよ。ガソリン代と日当五万。私は別に要らないし、宗教(むねのり)もきっと欲しがらないよ」

 意外な返事に驚いた。

 「えっでも、やっぱ、大変な事手伝ってもらってるし……」

 「一応、縁続きだからね。あれは何とかしないと、いつ(やく)が広がるかわからないし」

 「厄?」

 「宗教(むねのり)に視せてもらってるんだろ?」

 「え、えぇ、まぁ、ごちゃごちゃ訳わかんない小さい魔物とか、ヘドロみたいのとか、あと、さっき、家から黒い風が吹いて怖かったけど……あれ、全部、厄なんですか?」


 ツネ兄ちゃんは少し考えてから、教えてくれた。

 「私には、ヘドロと黒い風は視えなかったけど、怖かったんなら、全部そうだよ」

 普通の霊視力では、雑妖や幽霊は視えても、何者か未満の穢れや神聖な気配みたいなものは視えない。

 場の雰囲気として、ヤな感じや清々しく厳かって感じるだけだ。

 三界の眼(さんかいのめ)は、そう言うのも視える。

 他人の感情も、それが強ければ、光や形を持った何かに視えるらしい。

 「霊的なエネルギーみたいなものを視覚的に捉えてるんじゃないかと思うけど、私は三界の眼(さんかいのめ)じゃないから、わからないよ」


 「えーっと、話、戻していいですか? その、霊的にも大掃除してもらってますし、清掃業者や霊能者に払うのと同じくらいのお礼をしたいんです。何もなしじゃ、俺の気が納まらないし、双羽(ふたば)さん達、思い切り他人じゃないですか」

 俺は思い切って言った。

 オブラートに包んでちゃ伝わらない。


 「双羽(ふたば)さん達は近衛騎士だからね。王様の命令で宗教(むねのり)の護衛をして、その一環で危険を排除してるだけだよ。それに、あの人達こそ、お金なんて受け取ってくれないよ」

 「えーっと……賄賂とか、そう言うんじゃないんですけど……」

 「ムルティフローラは魔法文明国だから、お金ってもの自体、ないんだよ。二人にとって札束なんてただの紙束。メモ用紙にもならないって、断られるよ」

 俺は言葉を失った。


 窓の外で、昔事故った人が呆然としている。

 「お礼とか気にしないで、親戚筋に厄が行かないように、掃除頑張ってくれればいいよ」

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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