084.大金
ツネ兄ちゃんがリサイクルショップについて来てくれた。お祖母ちゃんが暇だろうからって、洗浄してもらったアルバムを一冊持って、助手席に乗り込む。
俺、気が利かない孫だなぁ。
食事制限があるから、食べ物はダメだし、花も雑菌云々で禁止だし、何も持って行けねーって思いこんでた。
リサイクルショップは、例の店長さんが対応してくれて、すんなり終わった。
祖母ちゃんは、古いアルバムを見て大喜びだった。顔の周りの光が眩しい。
「そのお金、二十年以上埋まってたが。ないも一緒じゃ。みんなのお小遣いにするがえぇが。大掃除のお駄賃が」
あっさり好きにしろと言われて、俺は困った。
二百万もどうやって……分家と巴家に百万ずつで、余りで要る物買うか?
帰り途、ツネ兄ちゃんに相談した。
「政治には、本人が言ってた分だけ渡せばいいよ。ガソリン代と日当五万。私は別に要らないし、宗教もきっと欲しがらないよ」
意外な返事に驚いた。
「えっでも、やっぱ、大変な事手伝ってもらってるし……」
「一応、縁続きだからね。あれは何とかしないと、いつ厄が広がるかわからないし」
「厄?」
「宗教に視せてもらってるんだろ?」
「え、えぇ、まぁ、ごちゃごちゃ訳わかんない小さい魔物とか、ヘドロみたいのとか、あと、さっき、家から黒い風が吹いて怖かったけど……あれ、全部、厄なんですか?」
ツネ兄ちゃんは少し考えてから、教えてくれた。
「私には、ヘドロと黒い風は視えなかったけど、怖かったんなら、全部そうだよ」
普通の霊視力では、雑妖や幽霊は視えても、何者か未満の穢れや神聖な気配みたいなものは視えない。
場の雰囲気として、ヤな感じや清々しく厳かって感じるだけだ。
三界の眼は、そう言うのも視える。
他人の感情も、それが強ければ、光や形を持った何かに視えるらしい。
「霊的なエネルギーみたいなものを視覚的に捉えてるんじゃないかと思うけど、私は三界の眼じゃないから、わからないよ」
「えーっと、話、戻していいですか? その、霊的にも大掃除してもらってますし、清掃業者や霊能者に払うのと同じくらいのお礼をしたいんです。何もなしじゃ、俺の気が納まらないし、双羽さん達、思い切り他人じゃないですか」
俺は思い切って言った。
オブラートに包んでちゃ伝わらない。
「双羽さん達は近衛騎士だからね。王様の命令で宗教の護衛をして、その一環で危険を排除してるだけだよ。それに、あの人達こそ、お金なんて受け取ってくれないよ」
「えーっと……賄賂とか、そう言うんじゃないんですけど……」
「ムルティフローラは魔法文明国だから、お金ってもの自体、ないんだよ。二人にとって札束なんてただの紙束。メモ用紙にもならないって、断られるよ」
俺は言葉を失った。
窓の外で、昔事故った人が呆然としている。
「お礼とか気にしないで、親戚筋に厄が行かないように、掃除頑張ってくれればいいよ」