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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第四章 賢治の十二月二十六日~十二月二十八日
83/130

083.憎悪

 親父の部屋の東には、三部屋あるみたいだった。

 どこから手をつけるかは、後で考える。


 土産物でもぬいぐるみでも、人形の類には洩れなく「何か」が入っていた。

 ゴミ袋に入れる瞬間、何度も目が合った。

 玄関を経由していないからか、雑妖もゴミと一緒に庭に出た。でも、ゴミ焼き円からは出られないみたいで、恨めしそうにこっちを睨んでいる。


 ノリ兄ちゃんは、魔法で丸洗いされた縁側をざっと視て言った。

 「豊一(とよかず)叔父さんの隣のお部屋は触っちゃダメ。明日は東の二部屋とトイレの隣のお部屋を片付けようね」


 片付けるっつーか、ほぼ全部捨てるけどな。


 誰も異論はなく、縁側と階段から出した物の選別をする。売れる物は軽トラに積む。

 みんな、要不要の選別スキルが大幅にレベルアップしていた。

 瞬時に判断して、ゴミ山と軽トラに振り分ける。

 掃除に使えそうな物はガレージへ。


 時々、クロエさんがゴミ袋を持って降りて来る。


 ガンガン、ゴミ山を高くする。

 よくこれだけの物があのスペースに入っていたと思う。


 ノリ兄ちゃんが、双羽さんと三枝さんに守られながら、玄関に回った。

 「こっち開いたし、ここだけ止めてても仕方ないから、安全地帯、消すね」

 ノリ兄ちゃんの雰囲気から、そこだけ止めてると何かマズイ事になるっぽい事が察せられた。

 誰も反対せず、ノリ兄ちゃんはあっさり、安全地帯の魔法を解いた。


 家から黒い風が噴き出した。

 壁があるのに、風が吹き抜けるのがはっきり視える。


 怖い。


 何がそんなに怖いのかわからない。

 でも、俺は足が震え、その場にしゃがみこんだ。

 「お兄ちゃん、大丈夫?」

 真穂の心配そうな声に顔を上げる。

 歯の根が噛み合わない。声も出ない。

 双羽さんが玄関で光の剣を一閃した。黒い風が、何の手応えもなく消えた。


 俺の震えが治まる。

 ノリ兄ちゃんが、にこにこ説明する。

 「憎悪と深い怨念を食べて、雑妖が立派な魔物に育っててね、それ、やっつけたんだよ」


 それ、誰の憎悪と怨念デスか? いや、今ならわかる。

 住んでた時は、何も知らなかった。気付かなかった……


 俺は、真穂にもう大丈夫だと言って作業に戻った。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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