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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第四章 賢治の十二月二十六日~十二月二十八日
82/130

082.階段

 近所の人達はもう帰っていた。

 叔父さんとマー君はかなり酔っている。


 「藍ちゃんが一応、ゆうちゃんも呼んでくれたんだけど、降りてこないんだよなぁ」

 「何年も籠ってるからな、顔ぉ会わせ辛いんだろう」

 叔父さんが、本家の方角を見て言う。


 俺はちょっと困って、真穂の顔を見た。

 「うん、どうせ、近所の人に詮索されるのがイヤ! とかだろうけど、あんなのでも一応、同居の家族だから……」

 「心配だわなぁ」

 真穂の言葉に、叔父さんが相槌を打つ。

 俺と真穂は同時に首を横に振った。

 「もうアラフォーの大人だし、別に心配はしてないんだけど……」

 「用があるから……」

 「ゆうちゃんに何の用だ? 大掃除の人手なら、間に合っとろうが」

 叔父さんが首を傾げる。


 ゆうちゃんが居ても、使えないことは、誰の目にも明らかだ。


 「証人。俺と真穂は、大掃除が終わったらここを出て、もう戻ってこないけど、真穂はまだ未成年だから、捜索願とか出されると面倒だろ?」

 「誘拐とかじゃなくて自分の意志で出ていくって言うことと、出て行く理由と、無理に言わされてるんじゃないっていうのを見てて欲しいの」

 「家出宣言を録音するから、後で祖父ちゃん達に聞かせて欲しいんだけど、いいかな?」

 「そりゃ、別に構わんが……」

 「住職さんとか、近所の人の前で言うと、引き止められたり、心配されたりするから……」

 「まぁ、いざとなったら、何とかする。心配せんでえぇ」

 叔父さんはそう言って、証人を引き受けてくれた。


 叔母さんと藍ちゃん、コーちゃんができあがった昼食を運んで来た。

 カツ丼を食べながら、気になった事を聞いてみた。ノリ兄ちゃんだけ、消化にいい素うどん。

 「真知子叔母さん、霊感あるの?」

 「ん? まぁ、ちょっと視えるだけ。お祓いも何もできないけど、内緒よ。ここらの人、そう言うの嫌うから」

 叔母さんは困った顔で苦笑した。


 もうひとつ、ゆうちゃんの母親の事も聞いてみた。

 叔母さんは更に困った顔をしながらも、答えてくれた。叔父さんが、一気に酔いがさめたのか、しっかりした声で補足する。


 二人の話を総合する。


 ノリ兄ちゃんが「大掃除したら叔母さんが見つかる」って言ったのは……


 俺は怖くなって、考えるのをやめた。

 どうせ、大掃除が終わったら出て行くんだ。


 少し休憩して、作業に戻る。


 まずは階段の物を出す。

 絶妙のバランスで積み上がった物を崩れないようにそっと降ろす。バケツリレーの要領で、降ろしては外へ、降ろしては外へ。

 あんなに邪魔でヤバかった階段が、普通に通れるようになった。


 双羽さんが水の魔法で、埃焼けした階段を一気に洗浄する。

 階段が板の木目も鮮やかに、天井をうっすら映して輝く。

 蔓延(はびこ)っていた雑妖も消え失せた。


 俺は、生まれて初めて、この階段の真の姿を見た。


 オヤジの部屋の障子を外して、外に出す。

 障子紙は後で貼り替える。

 三枝さんに魔法で軽くしてもらって、縁側を埋める家具を外に出した。

 物を除けたら、雨戸が動くようになった。二枚開けて、そこから直接庭に出す。

 小さい物は自分の筋力で、大きい物は魔法の助けを借りて、どんどん庭に降ろして、雨戸を開放した。

 縁側は、母屋の南側の幅いっぱいに達していた。

 山端家の間取図-縁側と階段

 挿絵(By みてみん)

 ……白さが、まぶしい。

 階段の真の姿が明らかになり、縁側の物がなくなって、雨戸が全開になった。

 ※茶色=収納家具やガラクタや、ゴミ等の堆積エリア。

 ※黒色=部屋の存在すらよくわからない不明なエリア。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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