008.助力
私は計画の詳細と、旅行プランのリンクを送った。
二十二日、終業式が終わったら、菜摘ちゃんと二人で、高校の卒業旅行に行く。
三学期の登校日は少ないから、今の内にって事で。
私はフリだけで、空港でアリバイ写真を撮って、お祖父ちゃんとお父さんが出発するまで時間を潰す。
菜摘ちゃんは、本当に旅行に行って、自撮写真を撮って、お土産を買って来て貰う。
私は帰って大掃除。勿論、近所の人達には、口裏合わせを頼む。まず、断られない。
みんな、ウチが産廃置場みたいなゴミ屋敷なの知ってて、何とかして欲しがってる。
消防団長さんとか、「防災上、問題があるから処分して欲しい」って時々言ってる。
旅費とお土産代は私が出す。写真はフリーソフトで頑張って、私の写真と合成する。
菜摘ちゃんは、お金の事はいいよって言ってくれたけど、「バイト代だと思って、受け取って」って頼んで、引き受けてもらった。
……よしッ! アリバイ要員確保ッ!
私は一人で小さくガッツポーズした。頼もしい幼馴染だ。
次は説得要員。
私が「旅行に行く」なんて言ったら、絶対、反対される。
だから、また住職さんにお願いする事にした。申し訳ないし、情けないけど、これもお祖母ちゃんと私の未来と地域の安全の為だ。
私は、ひとつ深呼吸してから、歌道寺に電話した。一階に聞こえないように小声で話す。
住職さんは、もうお祖母ちゃんが怪我をした事を知っていた。
「真穂ちゃんには悪いが、案の定……と思うとったげ。ゴミやガラクタと一緒に悪いモンも溜まっとるげ、弱いモンに祟るんじゃ」
ひとしきりお説教した後で、快く引き受けてくれた上、ゴミ捨ての手伝いも申し出てくれた。
流石にそれは申し訳なさ過ぎるので、丁重にお断りする。
「さよか。ゴミは処理場に直接持ち込めるげな。場所がわからなんだら、連れてったげるげ、ついでにゴミも運ぶぞ?」
「有難うございます。頑張ります」
頭を下げながら、電話を切った。
住職さんは御仏の化身かもしれない。お気持ちだけで、「ありがたや、ありがたや」ってなる。ホントに申し訳なさ過ぎる。
これで、住職さんにも、ご近所さんへの根回しを手伝って貰える。
知らぬはお祖父ちゃんとお父さんだけになるのも、時間の問題だ。