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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第四章 賢治の十二月二十六日~十二月二十八日
78/130

078.洗浄

 ヘドロは逃げようとしたのか、蔵の方を向いた。

 クロエさんと双羽(ふたば)さん、三枝(さえぐさ)さん、ノリ兄ちゃんを見る。


 ツネ兄ちゃんが、ノリ兄ちゃんを紹介する。

 ヘドロは失礼極まりない事を言い放った。

 「いや、えっ? あれっ? ムネノリ君って、死んだんじゃ……?」

 ノリ兄ちゃんは改めて名乗ったが、ヘドロは名乗るどころか、キョロキョロしだした。


 双羽さんが、向かいの畑の雪を軽トラ一台分くらい操る。

 雪の塊は空中で水になり、ふわふわ飛んでアメーバのように広がり、ヘドロ野郎を包み込んだ。

 俺達が掃除の後でやってもらってる、体を洗う魔法だ。

 ぬるま湯が、一瞬でドブ水に染まる。(たか)っていた雑妖が一撃で消え、ヘドロも落ちた。


 物理でもこんな汚ねーとか、何年風呂に入ってねーんだよ、このゴミニートはッ?


 「ちょ……マジ凄くね?」

 「一瞬でドブ色とか……ないわー。これはないわー」

 「きんもー……」

 俺、藍ちゃん、真穂が言葉少なに感想を漏らす。

 双羽さんが溜め息混じりに言う。

 「一度では無理ですね。あと二回……いえ、三回」


 ウチのゴミニートが、お手数お掛けしてすんません。


 双羽さんの予想通り、水の汚れを三回捨ててやっと、「ゴミニート」はただの「ニート」になった。

 「ゆうちゃん、髪切るからじっとしててね」

 ノリ兄ちゃんが、三枝さんに合図する。

 三枝さんは光の剣を抜いた。


 「いや、ちょっ、おま……何て声出してんだよ。キモいから喋んな」

 「ゆうちゃん、それはないだろ。宗教(むねのり)は声変わりしてなくて、これが地声なんだよ」

 「いや、キモいもんはキモいだろう」

 「貴方のように口臭が酷い訳ではなく、発言の内容に問題がある訳でもありません」

 ツネ兄ちゃんと双羽さんのフォローやツッコミも、ニートは意に介さない。ドブ臭い口で罵詈雑言を吐き続ける。


 三枝さんが剣で薄汚いロン毛を切ってくれた。

 ヘルメット風ヘアに藍ちゃんが爆笑する。

 「プッ……! 無理……むりムリむりムリ、これは無理だわあはははははははは!」

 「ちょっと、藍ちゃん、いくら何でも、そんな笑っちゃ悪いよ」

 真穂が笑いを(こら)えた変顔で、藍ちゃんの脇腹をつついて(たしな)める。

 「どうせ明日、街に連れて行くし、この話題、終了な」

 俺は、ゴム手袋の手をポンポンと打って締めた。


 これ以上、構ってられない。


 ツネ兄ちゃんが、ニートにも、ノリ兄ちゃんは王族だと説明したけど、無駄だった。

 そんな国知らないとか言って、ノリ兄ちゃんの妄想呼ばわりするだけだった。


 不敬罪で手打ちにされてしまえ。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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