表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第四章 賢治の十二月二十六日~十二月二十八日
75/130

075.母親

 親父の部屋の縁側サイドの半分は、母さんの部屋だった。

 幼い頃、俺と真穂もこの狭いスペースで過ごした。


 記憶よりずっと狭い。


 (ふすま)は一枚が辛うじて半分開くだけ。それ以外の場所は箪笥(たんす)で埋め尽くされている。

 押入れはあっても使えない。

 その箪笥も、半分以上がゆうちゃんの母親の物だ。

 祖母ちゃんが「もしかしたら帰ってくるかもしれんが。置いといたげて」と処分させてくれない。


 俺と真穂の服も残っていた。

 もう小さくて着られないが、祖母ちゃんが「下の子ができたら、お下がりにするが」と捨てさせてくれなかったものだ。


 箪笥と衣裳ケースに囲まれて、布団一枚敷くのがやっと。

 布団は片付ける場所がなく、万年床。


 今、布団の上は古雑誌で埋め尽くされていた。

 オヤジ好みの下衆な大衆誌だ。


 俺達の暮らしをゴミ捨て場にされたみたいで、軽く殺意が湧いた。


 ここにクズオヤジが居なくてよかった。

 あんなクズでも一応、人間の形してるから、殺したら俺が殺人罪に問われてしまう。


 俺は、下品なグラビア誌を紐で束ねた。

 衣裳ケースの底から、俺と真穂名義の郵便貯金の通帳が、一冊ずつ出て来た。

 とっくに満期が過ぎている。

 時効かもしれないが、一応、持っておく事にした。

 アルバムと通帳と印鑑と貯金箱の他は全部捨てた。

 母さんはとっくに、ここでの暮らしを捨てている。


 全部、要らない物なんだ。


 ゴミ袋を容赦なくゴミ山に積む。

 箪笥とかの大物は、三枝(さえぐさ)さんに魔法を掛けてもらって、庭に出し、一応、ブルーシートの上で中身を確認する。


 「お兄ちゃん、何これ、怖い」

 真穂が震える手で、古びた封筒を差し出した。

山端家の間取図-部屋が増えた

 挿絵(By みてみん)

 母さんはとっくに、ここでの暮らしを捨てている。

 ※茶色=収納家具やガラクタや、ゴミ等の堆積エリア。

 ※黒色=部屋の存在すらよくわからない不明なエリア。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ