072.無双
俺達が戻ると丁度、祖父母ルーム南半分の物出しが終わった所だった。
和箪笥に着物とか入ってたけど、どれも虫食いでボロボロ。
祖父母ルームの物で残ったのは、通帳とかの貴重品といつもの服、アルバム、古ぼけた金庫だけだった。
押入れは、酷い状態だった。
予備の布団は全部腐ってカビが生えて、虫ときのこの巣。カビと腐汁と虫の糞に汚染されて、押入れ内の他の物も終わっている。
押入れ本体にもカビが生えて、そこに雑妖がギュウギュウの満員で、この世の終わりみたいな地獄絵図だ。
コンクリートで埋めてしまいたい。
双羽さんが、水に塩素系漂白剤を大量投入して、押入れに流し込む。
魔法なのか、塩素が効いているのか。水に触れた雑妖が、一瞬で消滅する。
双羽さんは、塩素水を押入れ全体に行き渡らせ、そのまま放置した。
別の水塊で南半分の部屋を洗浄する。
呆けてる場合じゃない。
俺は、賞味期限が切れていないお中元、お歳暮を物置部屋に運ぶ作業に戻った。
ガレージに入れていた箱を運び、設置したスチールラックに置く。中身を出して、種類毎に透明のケースに収める。
「どこに何が幾つあるか」一目で在庫が把握できる配置にした。
ケースに入ってれば、鼠とかに荒らされずに済むだろう。多分。
ガレージに仮置きしていたテレビとコタツも、こっちに移した。
祖父母ルームで発掘した古びた金庫も、ひとまずここに仮置き。
物置部屋は、元「鼠地獄」とは思えない、清潔な倉庫になった。
消防団長が呼びに来た。
真穂が一応、声を掛けたが、ゆうちゃんは相変わらず来ない。
あのニートも何とかしないと……
あんまり大勢で行ってもアレだから、地元代表は米治叔父さん一人。
巴一家と騎士二人と使い魔は、マー君の車で区長の家に向かった。
もう日が暮れたから、俺達は戸締りして、分家に戻る。
みんなが戻って来るまで待つ間、俺はコタツで考えた。
大掃除の人手は十人、内三人が魔法使い、一人は人外。
俺と真穂二人だけで頑張ろうなんて、無謀だった事を思い知らされた。
汚屋敷レベルが高過ぎる。
魔法使いが洗剤で無双して、超火力で焼き払わなきゃ、どうにもならない。
もし、プロを雇ってたら、人海戦術で、業務用洗剤&高圧洗浄機&スチームモップ無双、クリーンセンターに搬入しまくりってとこか。
どんだけ金掛かったろう?
取り壊した方が安かったかもなぁ……
親戚で元手がタダの魔法でも、プロ並みのお礼しなきゃ、申し訳なくてヤベェ……
ってかあのニート、あんだけバタバタしてても出て来やがらねぇ。
ホント、どうにかしねぇと、祖母ちゃん、ゴミニートの為に本家に帰って、今度こそ寿命の前に死ぬかも知れん。