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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第四章 賢治の十二月二十六日~十二月二十八日
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071.寿命

 「お祖母ちゃん、後七年、自分の幸せの為に生きてね」

 ノリ兄ちゃんの妙な励ましに、みんな首を傾げた。

 「お祖父ちゃん達が、お祖母ちゃんを大事にしてくれないんなら、お祖母ちゃんは、お祖母ちゃんを大事にしてくれる人と暮らして、幸せになればいいんだよ」

 「そうだ、お袋、オヤジも兄貴もお袋よりゴミが大事だげ、怒られんのイヤなら、ウチぃ来るがえぇ」

 逸早(いちはや)く理解した叔父さんが祖母ちゃんに言う。


 祖母ちゃんは、政晶(まさあき)くんの手を撫でながら、首を横に振った。

 「難しいげ、考えさせてくれんが?」

 「えぇが、えぇが。しっかり体治して、退院してからでえぇが」


 病院を出てすぐ、ノリ兄ちゃんに聞いた。

 「あと七年って何が?」

 「お祖母ちゃんの寿命」

 あっさりした返事に、頭を殴られたみたいになって、声の代わりに涙が出た。


 魔法使いってそんな事までわかんのかよ。


 「三界の眼(さんかいのめ)だからね。その人にピントを合わせたら、大体分かるんだよ。残り十年切ってたら、何年後の何月何日までわかるし」


 じゃあ、俺も、わかるようになってるって事なのか?


 途端に人の顔を視るのが怖くなり、視線を足元に落とした。

 「借りてる人は、ピントを合わせ(にく)いみたいで、みんな、わかんないって言ってたよ」


 こんなヤバイ視力、割と気軽に貸し出してんのな。


 俺は話題を変えてこの場を逃げた。

 「俺、クリーンセンターに行って、ジャヌコに寄って帰る。真穂も来てくれるか?」

 「うん、いいよ」

 助手席に「視えない」真穂が居るだけで、少し気が楽になった。

 真穂と取りとめもない話をして灰を捨て、田舎にありがちな馬鹿でかい駐車場付きのショッピングモールで、買物を済ませた。


 ステンレスの丈夫なラック。

 これなら、カラーボックスみたいに腐らない。組立式で、バラせば場所も取らない。

 プラケースは、透明で中が見える物。

 在庫品がどのくらいあるかわかれば、余分に買う事もないだろう。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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