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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第四章 賢治の十二月二十六日~十二月二十八日

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70/130

070.見舞

 「一度に入ると他の人に迷惑だから」

 真穂が言って、まず、よく知っている身内が説明する事になった。米治叔父さん、藍ちゃん、コーちゃん、俺、真穂の順で入る。


 四人部屋だけど、他のベッドは空だった。

 祖母ちゃんがテレビを消して起き上る。祖母ちゃんの周りで、花が咲くみたいに光がパッと広がった。少女漫画で、キャラの背景に花が咲くのがあるけど、正にあんな感じ。

 「まぁまぁ、みんな、いい所に来てくれたが、ありがとね」

 祖母ちゃんは顔を梅干しみたいにして喜んだ。

 向かいの人は一時帰宅、隣は検査、斜めは手術で留守だった。

 残りのメンバーも病室に入る。


 「祖母ちゃん、久し振りー。俺、政治(まさはる)、覚えてるー?」

 マー君が軽いノリで挨拶した。

 「マー君、よう来たが、よう来たが。ありがとね」

 「こいつは俺の息子の政晶(まさあき)。嫁は今年の春、病気で亡くなったんだ」

 マー君に背中を押され、政晶君が祖母ちゃんの前に出る。

 祖母ちゃんは、泣きながら政晶君の手を握って、さすった。

 「ご無沙汰してます。経済(つねずみ)です」

 ツネ兄ちゃんが声を掛けると、祖母ちゃんはまた喜んだ。

 「ツネちゃん……立派になって……」

 「初めまして。宗教(むねのり)です」

 「まぁあ、ノリ君、元気になったが」

 「うん。ちゃんと育ってなくて、声変わりしてないけど、一応、働いてるよ」

 「お仕事できるの。よかったねぇ、よかったねぇ。瑞穂は、どうせすぐ死ぬなんて言ってたげ、ホントよかった……」

 祖母ちゃんが、またまた涙ぐむ。

 双羽(ふたば)さんが、ノリ兄ちゃんが王族である事と、来年にはあっちに行って、もうここには来られない事を説明した。

 それから、自分と三枝(さえぐさ)さん、使い魔の説明をする。使い魔は、執事さん風の年配の男性の形になっていた。

 祖母ちゃんは、わかったような、わからないような神妙な顔で頷いた。


 「このみんなで大掃除して、最低限の所はキレイになったから、松葉杖でも大丈夫だよ」

 「後でお父さん達に怒られんが?」

 俺の説明に祖母ちゃんの顔が曇る。

 「あぁ、それなら大丈夫。区長さんと住職さんと、駐在さんと消防団長さんと、隣保長さんが賛成してくれて、もし怒られたら、庇ってくれるって、約束してくれたから」

 真穂が言うと、祖母ちゃんは泣きだした。

 「ごめんねぇ……みんな、ごめんねぇ、苦労掛けて……」

 「いいよ。苦労してんの祖母ちゃんだし」

 「ゴミがなきゃ、そもそもこんな怪我せんで済んだが」

 俺と叔父さんがフォローする。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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