069.混沌
ここから賢治視点開始。
驚異の超スピードで、必要最低限の掃除は終わった。
庭、ガレージ、玄関、廊下、風呂、トイレ、台所、祖母ちゃんの部屋。それだけじゃない。居間と物置部屋までキレイになった。
階段下で、隠し部屋みたいなのも発見した。
掃除がまだの部屋から雑妖が出てくるけど、生活スペースの安全は確保された。
「曾孫の顔も見せたいし、大掃除の報告しに、お見舞いに行こう」
マー君の提案で、メシの後、祖母ちゃんのお見舞いに行く事になった。
マー君一家と騎士、叔父さん、藍ちゃん、コーちゃん、俺、真穂の大人数。
叔父さんとマー君が車を出す。
俺は灰を積んだ軽トラ。ついでに捨てて買出しにも行く。
走り出してすぐ、俺は一人で軽トラに乗った事を激しく後悔した。
ウチの外にも、化け物がうようよ居る。
それは、ノリ兄ちゃんに教えてもらって覚悟していた。分家にもちょっと居たし、寝てても何か凄え悪夢を見た。
でも、交通事故に遭った人が、その辺うろついてるとか、聞いてねえ。
はっきり視えるけど、対向車がぶつかっても素通りしてるから、生身じゃない。
道が矢田山市内に入ると、一気に数が増えた。
特に何かしてくる訳じゃない。でも、グロ耐性の低い俺のメンタルは、病院に着く頃にはボロボロだった。
ノリ兄ちゃん凄えよ。
こんなの毎日見て、のほほんとしてられるって、ハンパねぇ。
何とかコインパーキングに軽トラを止めた。
病院を視て、足が竦む。
混沌。
キレイな光の帯と、何だかよくわからないドロドロの物が、入り混じって病院を包んでいる。
でも、ここまで来て退く訳にはいかない。みんなに合流して、祖母ちゃんの病室に向かった。
「ケンちゃん。前にここ来た事ある?」
「あ、あぁ、うん」
「じゃあ、大丈夫だよ。視えるだけで、直接影響はないよ」
ノリ兄ちゃんに言われて、少しマシになったけど、俺の足はまだ震えていた。
すれ違う入院患者が、生身の人とそうでない人と、どっちかわからん人が混じってて、どこを視ても怖い。