067.ポイ
ツネ兄ちゃん達は、新品のDVDと切手と商品券を発掘して、捨てないようにどけてくれていた。
もうそんな丁寧にしてくれなくても、全部捨ててくれるだけで充分なのに。有難過ぎて泣きそうになる。
「リモコンが埋まってるだろうから、探しながらやってるんだ」
マー君に言われてやっと気付く。
それかぁ。使わないのが普通だったから、忘れてた。
「エアコンとか、買い替えるからいいです。気にしないで」
私は宣言して、スコップで汚洋服の山を掘った。
雪かきよりキツイ。精神的な意味で。
どんどん籠とゴミ袋に詰める。三人もガンガン捨ててくれた。
藍ちゃんが、長押に掛けっ放しだった作業服を除けた。ハンガーも錆びてるから、ゴミ袋にポイ。その下から襖が出て来た。
襖の足元には、カラーボックスが四つ。全部、雑誌とビデオテープがぎっしり。
DVDと切手と商品券は、マー君の提案で売る事になった。
現役のテレビと、発見したリモコンふたつと、こたつ本体だけガレージに入れる。
他は全部捨てた。
蜜柑の腐汁で、畳も腐っていた。新品を発注してもらっててよかった。
双羽さんは、鼠の巣だった物置を洗った後、念入りに熱湯ですすいでから、業務用サイズの塩素系漂白剤を三本、冷水に混ぜて消毒してくれた。
居間の隣の部屋は後回し。
先にお祖父ちゃんお祖母ちゃんの部屋を片付ける。
物置の消毒が終わった双羽さんが、居間の丸洗いを始めた。
「ここは通帳とか、大事な物があると思うから、慎重に行こう」
マー君が、社会人らしい忠告をしてくれた。
プライバシーとか気にしてる場合じゃない。
部屋は、入口の襖以外、全部箪笥に囲まれていた。
老夫婦にこんなに服が要る訳ない。
実際、いつも同じ服をローテーションしてるし。箪笥に入りきらないのか、床にも服の山があって、畳が見えない。
箪笥の上にも、置物とか箱とか積んであって、地震が起きたら絶対ヤバイ。
布団は敷きっ放し。
小さい卓袱台の上には、ごちゃごちゃ物が乗っている。足の踏み場どころか、天井以外に隙間がない。
「普段着てる服は気に入ってると思うから、それだけ残して後は全部捨てて下さい」
「箪笥に重要書類仕舞ってたりするから、一段ずつチェックしてから捨てような!」
マー君に言われると、そうせざるを得ない。
まずは床を開ける為に、物を外に出す。現役の服は、私がピックアップ。他のみんなが、その他の物をゴミ袋に入れる。