066.居間
ツネ兄ちゃんとマー君と藍ちゃんとクロエさんには、台所の隣にある居間の物出しをしてもらう。
使ってる部屋だけど、人が住めるレベルじゃない。
鼠の糞を受けた袋は、すぐにずっしり重くなった。
床と天井がキレイになる頃には、袋は八割方いっぱいになった。鼠の尿臭が目にしみる。
私がゴミ袋を捨てに行き、お兄ちゃんは物置の中身を運び出す。私と叔父さんもすぐに戻って、物出しに取り掛かった。
壊れた扇風機や古いテレビ、ラジオ、何に使うかわからないくらい古い家電製品、段ボール、衣裳ケースとかがぎっしりで、全部に鼠の尿臭が染みついていた。表面を洗っただけじゃ取れないらしい。マスク越しでもキツイ。目にしみて涙が出る。
重い物はクロエさんに頼んで、他は身内で運んだ。
「居間の物は全部汚いから、現役のテレビとこたつ本体以外、捨てて」
こたつ布団は、お祖父ちゃんとお父さんの食べこぼしだらけ。こたつの上も、ダイニングテーブルとほぼ同じ。古新聞、古雑誌、蜜柑の皮や汚れた食器、灰皿、お菓子の袋、郵便物、紙袋、割り箸、調味料が乗ってる。
ご飯の時だけ、ちょっとスペースを開ける。
畳の上は、足の踏み場もない。
ゴミはポイ捨て。煙草の吸殻も山盛り。服は脱ぎ散らかして、山になってる。スナック菓子やおつまみの袋は、半分くらい残ってても次を開けるし、台所に置ききれない食器も隅に積んである。古新聞、古雑誌も山積みで、その山が崩れた上に更に積んでる。勿論、掃除できないから、埃だらけ、抜け毛だらけ。
カーテンと壁紙もヤニでベタベタ。蛍光灯の笠もヤニで茶色い。上には埃の山。
テレビのリモコンはどっか行ってるから、手動でチャンネルを変えてる。リモコン必須の機能は、使った事がない。
エアコンのリモコンもどっか行ってて、冷房と暖房の切替は手動だけど、それ以外は点けっ放し。資源の無駄遣いしまくり。
テレビ台の上には、もう使えない古いテレビと、現役の薄型テレビと、壊れたビデオデッキが乗ってる。
畳の上には、台の中に入りきらないビデオテープが溢れてる。録画するだけで満足して、もう絶対見ないだろうに、捨てさせてくれない。デッキが壊れても、修理に出さない。
DVDレコーダを買ってきたけど、使いこなせなくて、埃を被ってる。失敗したDVDと箱買いした新品が、これまたてんこ盛り。
冬も暖かいから、年中ゴキブリが居る。暖かいのに蜜柑を段ボール箱に入れて置いてるから、すぐ腐る。
何、このゴキブリ無限増殖システムは?
物置部屋の物を出しながら、居間の惨状を思い出して、申し訳なさで泣きそうになる。
全部出し終えてすぐ、野菜の大プラ籠とスコップを持って居間に入った。