065.物置
たくさんの鼠が、驚いて部屋を走り回る。
双羽さんがピシャリと戸を閉めた。
私達はびっくりし過ぎて声も出せない。
物置部屋って言うか、鼠の巣だった。
「始末します。ゴミ袋をご用意下さい」
双羽さんは冷静に宣言した。私達は言われるまま、ゴミ袋を取りに戻った。
庭に出ると、曲がり角の先を埋めていた物も、灰にしてくれていた。
「生き物がいっぱい居る部屋、掘り出したんだ?」
「えっ? あ、あぁ、うん、はい」
ノリ兄ちゃんに声を掛けられて、なんだかよくわからないまま頷いた。ガレージからゴミ袋の束を出して戻る。
「終わりました。苦手な方は、ゴミ袋を置いて退がって下さい。クロエ、お前もです」
米治叔父さんだけが、ゴミ袋の口を広げて待機。後はみんな台所に入った。
台所は、小さい冷蔵庫だけがポツンと残っていた。これもひょっとしたら、後で捨てるかも。取敢えず、中身を空にして置いてある。
ヘドロが詰まっていたシンクはピカピカ。
天井も床も壁も、全く汚れが残っていない。
ここって、こんなに広かったんだ……
学食の厨房と同じくらいあるかもしれない。ガランとした台所の広さが寒々しい。
叔父さんは、口を括った重そうなゴミ袋を両手に提げて、無言で庭に出た。
げっ……あれ、全部鼠……
双羽さんは顔色ひとつ変えず、クロエさんに命令して死体袋を運ばせた。
水が、台所の隣室の床を洗っている。水は、数え切れない鼠の糞を含んで、黒い泥になった。私が水に洗剤を足して、お兄ちゃんはゴミ袋の口を広げて待つ。