063.回復
十二月二十六日。
朝、起き上ろうとしたけど、筋肉痛が凄過ぎて声も出ない。何とか起きてそーっとトイレに行った。
分家のトイレは、魔法で洗ってないのに、とってもキレイ。
今日も頑張ろう。
みんなで集まって朝ご飯を待つ間、ノリ兄ちゃんが歌を歌ってくれた。
ムルティフローラの歌なのかな。不思議な響きの言葉が、女の子みたいに可愛くてやわらかい声に乗る。
何言ってるかわからないけど、聞いてると元気が出て来た。筋肉痛でギシギシ言ってた体が、隅々までほぐれて、元気の素みたいなのが行き渡る。
歌い終わったノリ兄ちゃんは、三枝さんに支えられて座った。
「ステキな歌ですね」
「歌じゃないよ。ちょっとした怪我とかを治す呪文。経済が筋肉痛になったって言ってたから、みんなもついでに治したの」
「えっ……えぇえぇーッ? 凄い! あ、ありがとうございます」
菜摘ちゃんちで遊んだゲームの回復魔法、リアルで体験しちゃったよ。
マジで体、超楽になったし!
マー君が「早い方がいいよな」って言って、車三台に分乗してウチに行く。双羽さんと三枝さんが窓から身を乗り出して、夜の内に積もった雪を魔法で除ける。
近所の人達が、びっくりした顔で見とれていた。
そりゃそうだ。
道と庭を除雪した水で、灰をゴミ袋に詰める。あんなにあったゴミも、灰になるとたったの五杯分。
あっけなかった。