062.発注
台所の物出しが終わって、ツネ兄ちゃんも選別を手伝いに来てくれた。
私はちょっと気になって、台所を覗いてみた。
手前の廊下に双羽さんとクロエさんがいる。
二人は汚台所と戦っていた。
双羽さんが操る水に、クロエさんが洗剤を注ぐ。業務用サイズのボトル二本を含んだ洗剤水が、床を這う。
一瞬で真っ黒になった。泡すら立たない。
泥水の汚れをゴミ袋に出して、もう一回、洗剤チャージ。洗剤水が床に突撃。また一瞬で汚泥化。
「あの、すみません。クロエさん、ちょっといいですか?」
双羽さんは、呪文を唱えながら頷いてくれた。
クロエさんを庭に連れ出して、空になった棚をゴミ焼き円に運んでもらう。
私は残す物をガレージに運ぶ。残す物は少なかった。
雪が降るといけないから、売る物もガレージに入れる。
日没寸前、庭に出した物の選別が終わった。
双羽さんが出てきて、みんなを洗ってくれた。知らない間にドロドロに汚れていた。みんな疲れ切ってる。
一応、ゆうちゃんも呼ぶ。
「っるせぇ! ブス!」しか言わなかったから、放置。
今夜は台所の灯を消して、戸締りして分家に引き揚げた。
三人の帰りをこたつでダラダラして待つ。
ノリ兄ちゃんは、クロエさんを黒猫に変えて、うんと可愛がっていた。
正に猫可愛がり。黒猫はゴロゴロ喉を鳴らして甘えている。
猫の時はちゃんと「猫」なんだ。
私は変な所で感心してしまった。
夕飯を食べながら、お兄ちゃん達が色々説明してくれたけど、疲れ過ぎてて右から左へ抜けてゆく。
リサイクルショップの店長さんは、米治叔父さんの知り合いだった。
新品の食器以外は、値段が付かなかった。
捨てるのがアレなら、施設とかに聞いてみたらって、近くの老人ホームと児童養護施設と自立支援施設を調べてくれた。
お兄ちゃんと叔父さんが手分けして問い合わせて、欲しいって言ってくれた所に寄付してきた。
クリーンセンターは、ギリギリセーフで間に合った。
帰りに畳屋さんに寄って、新畳を発注した。
「どうせ、腐っとるげな」