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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第三章 真穂の十二月二十五日~十二月二十六日
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061.許婚

 みんなでガンガン物出しをしてると、(なわて)さんがやって来た。

 「お? 真穂ちゃん、今年は島へ行かんが?」

 「お祖母ちゃんが大怪我したんで」

 私は慎重に言葉を選んだ。

 「何、水臭ぇ。一言いってくれりゃ、手伝うたに。どれ、何運ぶが?」

 (なわて)さんは猫なで声で言いながら、ずかずか敷地に入って来た。(なわて)さんに限らず、この辺の人は割と気楽に他人(ひと)()に上がり込む。

 普通はそうじゃないって知ったのは、高校に入ってから。


 「人数足りてますから、手伝ってくれなくて大丈夫です。身内だけで充分ですから」

 「身内? そのガイジンも身内げ? 許婚(いいなずけ)の儂ぁ身内も同然が?」

 「真穂ちゃん、この人のお孫さんと結婚するの?」

 ノリ兄ちゃんが素で質問してくれた。

 「あー、それ、この人、本人なんです。お祖父ちゃんとこの人が、勝手に盛り上がっちゃって、私、お断りしたんですよ。年が離れ過ぎてるから」

 「ふーん。そうだよねぇ」

 「何だお前は? 男は年取れば取る程、深みが増してイイんだ」

 「何って、従兄(いとこ)です。お爺さん、どなたですか?」

 「イトコ? あぁ、瑞穂(みずほ)ん子げ。俺はこの真穂の許婚(いいなずけ)(なわて)家の長男、稲造(いなぞう)だ」

 (なわて)さんはふんぞり返った。


 護衛の三枝さんが、ノリ兄ちゃんと私の前に立つ。(なわて)さんは、ちょっと怯んで足を止めた。

 ノリ兄ちゃんが小声で確認する。

 「真穂ちゃん、この人、好き?」

 「生理的にムリ」


 「畷稲造(なわていなぞう)が、山端真穂(やまばたまほ)に百歩以上、近付く事を禁止します」

 ノリ兄ちゃんは冷たく言って、杖で(なわて)さんを指した。

 (なわて)さんが回れ右して、出て行く。

 「お……おっ? おぉおぉおぉッ? 何じゃこりゃあ! 足が勝手に……!」

 (なわて)さんは訳のわからない悲鳴を上げながら、顔だけこっちに向けた。

 足はどんどんウチから遠ざかる。少し行った所で立ち止まった。

 振り向いて、足踏みしている。

 「何しやがった! 壁を除けんが!」

 壁なんてない。

 (なわて)さんが農道の真ん中で足踏みしてるだけだ。

 「名前を呼んで強制したんだよ。僕が禁止を解かない限り、真穂ちゃんに近付けないよ」

 「ありがとう……ございます」


 なんだかわからないけど、助けてもらっちゃった。

 魔法ってホント凄い。


 (なわて)さんは、暫く壁を叩くパントマイムをしてたけど、口汚く罵って帰って行った。

 ノリ兄ちゃんは、何事もなかったみたいにゴミ焼きの魔法を使った。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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