057.台所
私達はついに、汚台所と対峙する。
入口にジャラジャラうるさい玉暖簾。勿論、油煙とヤニでベタベタ。
何の為にあるかわからない。外して捨てる。
灯のスイッチは、大きい食器棚に埋もれてるから、操作した事がない。
夜でもずっと点けっ放し。エネルギーの無駄遣い。
食器棚の上にも段ボール。前にはカラーボックスがあって、その上にもカラーボックスと段ボールが積んである。食器棚はそう言う物に埋まっていて、食器を片付けられない。壁は全く見えない。
台所の真ん中には、六人掛けのダイニングテーブル。食べこぼしとヤニと油煙でコーティングされて、脚までベタベタの真っ黒。
テーブルの上には、食器棚に入りきらない食器やレシピの切り抜き、公共料金の明細や郵便物、レシート、古新聞、油煙でギトギトになった百均のプラ籠、調味料の小瓶や乾物、新品も使い掛けもごちゃ混ぜで満載。
プラ籠の中身は割り箸、レジでくれるスプーン、フォーク、ストロー、お手拭きと紙類。
黴た割り箸や欠けたお茶碗でも、捨てたら怒られるから放置。
テーブルの下には、ジャガイモ、玉葱、大根とかの根菜類が入った段ボールが置いてあって、仮に椅子に座れたとしても、足を入れる余地はない。
勿論、ここの食材も芽が出たり腐ったりして、ドブより酷い臭い。
私が生まれる前からずっとここに置いてある。
各椅子の上には、郵便物、ビニール袋、汚れたエプロンやタオル、インスタント食品入りの段ボール、古新聞、古雑誌、汚座布団が居座っていて、人間は座れない。
鼠やゴキブリの特等席。夏はハエも大喜び。
背もたれにも、色々な物が突っ込まれて膨らんだビニール袋や、エコバッグが掛かっていて、座面に物を乗せていないとバランスが崩れて倒れてしまう。
テーブルセットは完全に使用不能。
年中、居間のこたつで食べている。
床は油や野菜屑がこびり付いていて、鼠やゴキブリの糞で真っ黒。
天井も、ヤニと油煙でギトギト。
蜘蛛の巣は埃と油煙が絡まって、黒い氷柱みたいに垂れ下がっている。