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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第三章 真穂の十二月二十五日~十二月二十六日
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056.衛生

 双羽(ふたば)さんは、西隣の畑から雪を取って、洋式トイレの掃除を始めた。

 洗剤湿布を剥がした水が、くるくる渦を巻いて、トイレットペーパーをゴミ袋に捨てた。

 私は段ボールを置いて、キレイになった水に、湿布にしたのと同じ洗剤を足す。

 双羽さんは頷いて、トイレ掃除を再開した。

 トイレの在庫出しと、洋式トイレ掃除は、ほぼ同時に終わった。

 壁や窓硝子のヤニが取れて、白く輝いている。金属パイプに顔が映る。便器も尿石が取れて真っ白。タイルの黴もなくなって、マスク越しでも吐きそうだったあの臭いもしない。


 魔法凄い。


 新品のペーパーをセットして、ふわふわのタオルを掛けて、終了。

 手洗い場の収納も空にして、男子トイレ&手洗いコーナーも、双羽さんにお願いした。

 五人と魔法使いで集中したら、「終わってる汚トイレ」が、あっという間に普通の家レベルになった。

 テンションが上がる。

 「よし、次、お風呂!」

 お兄ちゃんが言って、脱衣所に積み上がった段ボールを下ろす。

 「双羽さん、お風呂掃除お願いします。塩素使ってるんで、水だけでして下さい。すみませんけど、そこのタオルは全部捨てて下さい」

 「了解」

 軍人らしいキビキビした返事。つられて私の動きもキビキビする。

 五人でどんどん在庫の箱を出す。

 倉庫の前に在庫の段ボールが積み上がって、壁になる。

 脱衣所の段ボール壁の後ろに、カラーボックスが幾つも埋まっていた。カラーボックスの上にも段ボールが積んである。


 こんなのがあるから、狭いんだ。


 カラーボックスの中身は汚いから、全部捨てた。

 小さい虫がいっぱい居る。

 カビだらけのカラーボックスも捨てた。


 在庫の山をどうするか、後で考えよう。


 今は、とにかく出す。

 洗面台の収納の物を庭に出す。

 体が芯から熱くなって、汗が流れる。

 みんな無言でひたすら運んだ。

 こんなにたくさん、一生掛かっても使い切れる訳がない。

 双羽さんは、風呂場を天井までキレイにしてくれた。

 全く黴がない。経年劣化でちょっと塗装が剥がれてるけど、浴槽もタイルもピカピカだった。塩素臭もない。カラフルなヘドロもない。

 古びた洗面器も、あんなにしつこくこびり付いていた湯垢が取れている。

 私は、まだ新しい箱から、シャンプー、リンス、石鹸をひとつずつ出して置いた。

 空になった収納棚に何を入れるか、後で考える。

 洗濯機と乾燥機も、コンセントを抜いて庭に出した。洗濯機と乾燥機があった場所は、埃、髪、虫、糞、死骸のカオスだった。

 よくトラッキング火災にならなかったな、とツネ兄ちゃんが呆れる。

 空っぽで黴だらけの脱衣所掃除も双羽さんにお願いした。双羽さんは嫌な顔ひとつせず、脱衣所のカオスを一掃する。

 魔法の水が、逃げる虫を一匹残さず捕まえる。

 ツネ兄ちゃんが、双羽さんを庭に呼んだ。

 汚れを取り除いてから、電源を入れて動作チェックするらしい。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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