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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第三章 真穂の十二月二十五日~十二月二十六日
54/130

054.クロ

 大笹さんがクロを指差す。

 「その……猫が、ですかい?」

 「クロは猫じゃありません。ホントの姿、見てみますか?」

 みんなが小さく頷く。

 ノリ兄ちゃんは、クロに庭へ出るように言った。クロがニャーンとイイお返事をする。ピンと尻尾を立てて、障子に駆け寄り、前足で開けて庭に降りた。

 「クロ、こっち向いてホントの姿に戻って」

 クロは言われた通りにこっちを向いた。紙袋が割れたみたいな、乾いた音がして、黒猫が消える。

 誰も何も言わない。

 駐在さんと大笹さんが、障子を全開にした。

 庭にでっかい鳥の足が二本、立っている。

 二人が上を見て、息を呑んだ。

 大山さんと区長さんも上を見て、腰を抜かした。叔父さんが区長さんを支える。

 私達も気になって縁側に出た。


 庭に悪魔が居る。


 猛禽類っぽい足の上に、人っぽい体が付いてる。黒猫みたいな艶やかな毛が生えた筋肉質な体。手には鉤爪。肉球なし。尻尾も黒猫拡大版で、消防ホースサイズ。背中には、(トビ)とか(フクロウ)みたいな茶色い翼がある。でも、顔は巨大な黒猫。二階の屋根より背が高くて、身長が五メートルくらいある。


 黒猫とマッチョ男と猛禽類を足して三で割った的な悪魔……


 「クロエ、ご挨拶して」

 ノリ兄ちゃんが声を掛ける。


 ポンッ。


 音の後、悪魔が消えた。

 代わりにメイドのクロエさんが現れる。エプロンドレスのスカートをちょっとつまんで、優雅にお辞儀した。

 「ご主人様の下僕、クロエでございます」

 「普段の用事は下男の形でさせてて、今回は大掃除だから、女中の形にしてるんです」

 ノリ兄ちゃんが説明した。


 いや、そんな使い分けとか聞いてないし。

 って言うか、どこにポイントを置いて驚けばいいかわからない。


 リアクション不能。みんなも固まったまま。

 「クロ、おいで、抱っこしよう」

 クロエさんは一瞬、嬉しそうな顔をした。

 ポンっと音が弾けて、黒猫が部屋に駆け込んだ。

 ノリ兄ちゃんの腕の中でゴロゴロ言ってるのは、どう見てもタダの可愛い黒猫だ。

 「姿は変わっても、力は元のままだから、普通の強盗とかなら大丈夫ですよ」


 逆に強盗が心配デス。


 マー君が、あー寒っとか言いながら、障子を閉めに来る。みんな、我に返って部屋に入った。

 「僕、来年の秋にあっちに行って、もうここには来られないから、最期に一回くらいは、こっちの親戚にも会ってみたくて、無理言って連れて来てもらったんです。今回だけですから、少しの間、宜しくお願いします」

 みんな、ただもう、首振り人形みたいにカクカク頷くしかなかった。

 【余談】政晶は、この話ではぼぼ空気ですが、「野茨の血族」では主役でした。一カ月くらい宗教の下僕と共に旅をしていました。その件で、クロ=クロエを知っているつもりでしたが、「ほんとうのすがた」を見る機会がなかったので、今回が初見。声も出ないくらい驚いたので、このシーンでは台詞がありません。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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