051.紹介
改めて自己紹介してから、箸をつけた。
名乗っただけだから、謎の人のままだ。
お誕生日席に座った叔父さんが、取敢えず、よく知ってる身内に話を振る。
「マー君、久し振りだな。ツネちゃんも。えーっと……宗教君と政晶君は初めましてだな。みんな、今、何しとるが?」
「俺は大学ん時に会社興して、今もその社長。経済は技術部長。宗教は大学の准教授。政晶は中二」
まだ半分寝てる声で、マー君が答える。
社長って凄い。
叔父さん達も感心してる。
「凄いな。何の会社だ? ウチも相変わらず農業だげ、会社組織にしてな、ヨメに経理やってもらっとるが」
「産業ロボットとか作ってるんだ。工場で使う業務用の一点モノ」
「へぇー、何やわからんが、凄いげな。宗教君も若いのに大学教授なぁ、凄いげな。何教えとるが?」
双羽さんは箸を上手に使ってるけど、三枝さんは無理みたい。スプーンで食べてる。
黒猫はお行儀よく座っていた。
かわいい。
「教授じゃなくて、准教授ですよ。術理解析学が専攻で、魔法の仕組みとか教えてます」
「……へぇー……全くわからんが、何やら凄いげな。学生さん、魔法使いなれるが?」
「魔力がないと無理ですよ。でも、魔力の水晶とか補助具があれば、何とかなるかも」
あ、凄い。
ホントに魔法使いの弟子、育成してるんだ。
進路変更、しちゃおっかな?
「ノリ兄ちゃんのお勤め先って、何大学ですか?」
「帝国大学魔道学部、帝都だよ。ちょっと遠いね」
「あ、そ、そうなんですか、すごーく遠いですね」
学力的な意味で遠過ぎる。
最高学府。東の帝大、西の古都。この国の二大最高峰の一個。
私じゃどう頑張っても無理。凡人は、普通に、地道に生きるしかないか。
「魔法に興味あるの? この近くなら、商都の水都大学とその隣の神扉大学にも魔道学部があるよ」
「あ、いえ、ちょっと聞いてみただけなんで、あはは……」
どっちも私じゃ無理だ。ハイレベル国立大。