049.開通
「みんなー、お昼食べに戻っといでーって」
コーちゃんと政晶君が走って来た。
もうそんな時間なのか。
まだこんな時間なのか。
二階に上がって、一応、ゆうちゃんにも声を掛けてみた。
「分家でお昼一緒に食べよう。あと、ノリ兄ちゃん達が何か説明してくれるって」
「うるせぇ! ブス!」
起きてたみたいで、すぐに返事があった。
これ以上喋っても意味なさそう。
私とツネ兄ちゃんは、両手にふたつずつゴミ袋を持って出た。
お兄ちゃんが、お歳暮の箱を三つ重ねて運ぶ。崩れたカラーボックスは、三枝さんも水で押し流した。
玄関から、突き当りの台所までが、開通した。
家に風が通る。
階段脇のスペースには、棚と箪笥が合計四つ詰まっていた。
引出しをちょっと開けたら、虫の巣だった。小さな蛾とその幼虫の死骸と生体がたくさん。衣類は食べられて、殆ど土に還っている。
すぐに閉めたけど、何匹か飛んで行った。
箪笥を除けると、小さなドアがあった。
これこそホントに隠し部屋かも……?
中には古い扇風機とか、物がぎっしり。
うんざり。多分、階段下収納って奴だ。
装備を外して、外の雪で手と顔を洗う。
冷たさが気持ちいい。
「あぁ、食事の前に洗った方がいいですね。コンタクトの方はいらっしゃいますか?」
みんな首を横に振る。
声を出す元気もない。
双羽さんは全員の顔を順番に見て、呪文を唱えた。
畑の雪が軽トラ一台分くらい浮き上がって、一瞬で解ける。三枝さんも、同じ呪文を唱える。
コーちゃんが、口をあんぐり開けて呆然とする。初めて見る魔法に驚いているのか、ウチの廊下が普通に歩ける状態なのが見えて、驚いているのか。
水の塊が私の足下から、螺旋を描いて這い上がって来る。
温かい。丁度いい湯加減のお湯だ。
あっという間に濁る。首まで洗って離れた。ゴミ山に汚れを吐き出して、すぐ戻る。
キレイなお湯が、顔と頭をやさしく洗ってくれた。
お湯が触れてるのに、体は全く濡れていない。でも、汚れが落ちて、体が凄く軽くなった。
やっぱり魔法、凄い!
全員、洗い終えると、二人はお湯を用水路に流した。
戸は開けっ放しだけど、ゆうちゃんが居るし、大丈夫でしょ。
道々、双羽さんが除雪してくれたお蔭で、分家まで歩くのは、とても楽だった。