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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第三章 真穂の十二月二十五日~十二月二十六日
49/130

049.開通

 「みんなー、お昼食べに戻っといでーって」

 コーちゃんと政晶(まさあき)君が走って来た。

 もうそんな時間なのか。

 まだこんな時間なのか。

 二階に上がって、一応、ゆうちゃんにも声を掛けてみた。

 「分家でお昼一緒に食べよう。あと、ノリ兄ちゃん達が何か説明してくれるって」

 「うるせぇ! ブス!」

 起きてたみたいで、すぐに返事があった。


 これ以上喋っても意味なさそう。


 私とツネ兄ちゃんは、両手にふたつずつゴミ袋を持って出た。

 お兄ちゃんが、お歳暮の箱を三つ重ねて運ぶ。崩れたカラーボックスは、三枝(さえぐさ)さんも水で押し流した。

 玄関から、突き当りの台所までが、開通した。


 家に風が通る。


 階段脇のスペースには、棚と箪笥(たんす)が合計四つ詰まっていた。

 引出しをちょっと開けたら、虫の巣だった。小さな蛾とその幼虫の死骸と生体がたくさん。衣類は食べられて、(ほとん)ど土に(かえ)っている。

 すぐに閉めたけど、何匹か飛んで行った。

 箪笥を除けると、小さなドアがあった。


 これこそホントに隠し部屋かも……?


 中には古い扇風機とか、物がぎっしり。

 うんざり。多分、階段下収納って奴だ。


 装備を外して、外の雪で手と顔を洗う。

 冷たさが気持ちいい。

 「あぁ、食事の前に洗った方がいいですね。コンタクトの方はいらっしゃいますか?」

 みんな首を横に振る。

 声を出す元気もない。

 双羽(ふたば)さんは全員の顔を順番に見て、呪文を唱えた。

 畑の雪が軽トラ一台分くらい浮き上がって、一瞬で解ける。三枝さんも、同じ呪文を唱える。

 コーちゃんが、口をあんぐり開けて呆然とする。初めて見る魔法に驚いているのか、ウチの廊下が普通に歩ける状態なのが見えて、驚いているのか。

 水の塊が私の足下から、螺旋を描いて這い上がって来る。

 温かい。丁度いい湯加減のお湯だ。

 あっという間に濁る。首まで洗って離れた。ゴミ山に汚れを吐き出して、すぐ戻る。

 キレイなお湯が、顔と頭をやさしく洗ってくれた。

 お湯が触れてるのに、体は全く濡れていない。でも、汚れが落ちて、体が凄く軽くなった。


 やっぱり魔法、凄い!


 全員、洗い終えると、二人はお湯を用水路に流した。

 戸は開けっ放しだけど、ゆうちゃんが居るし、大丈夫でしょ。

 道々、双羽さんが除雪してくれたお蔭で、分家まで歩くのは、とても楽だった。

 山端家の間取図-隠し扉発見

 挿絵(By みてみん)

 家に風が通る。

 玄関から台所まで開通。また、隠し扉が見つかった。

 ※茶色=収納家具やガラクタや、ゴミ等の堆積エリア。

 ※黒色=部屋の存在すらよくわからない不明なエリア。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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