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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第三章 真穂の十二月二十五日~十二月二十六日
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048.発掘

 雪下ろしのスコップを二本持って戻る。

 クロエさんは黙々と、カラーボックスや棚を中身が詰まったまま、外に出している。

 三枝(さえぐさ)さんは、ひとつずつ呪文を唱えて持ち出す。

 「二本か……よし、ツネ兄ちゃん、真穂、スコップで掘ってくれ。俺は洗剤とか、重い物持ってくよ」

 上の方から少しずつ、スコップですくってゴミ袋に入れる。

 手でするよりずっとたくさん入れられて、凄く捗る。

 重くて固い手応え。

 周囲のゴミを手で除けたら、洗剤の段ボールが出て来た。

 スコップで慎重にゴミを除けて、お兄ちゃんに交替。お兄ちゃんは、食器用洗剤が二ダース入った箱を持って庭に出た。

 玄関からトイレ前までの廊下には、背の高い棚が九つ、低い棚が六つ、カラーボックスが十二個あった。

 棚の前に棚があって、奥は完全に使用不能。部屋の入口を塞ぐ壁。

 玄関の右手側は、洋間と納戸。

 左手側は、玄関に近い方が仏間、奥はツネ兄ちゃんも知らない部屋だった。

 洋間の入口は、玄関の右奥にもあった。靴箱で塞がってて、私は気付かなかった。

 どの部屋も、物がギュウギュウで人が入れなくて、広さがわからない。

 スコップと魔法の導入で、廊下の物出しが面白いくらい進む。

 三枝さんが、階段と謎の部屋の間の棚を除けると、また同じ大きさの箪笥(たんす)が出て来た。


 何でこんな所に服置いてんの?


 クロエさんが箪笥を運び出すと、更に箪笥が出て来た。

 私とツネ兄ちゃんが、お父さんの部屋の前まで掘り進む。

 お兄ちゃんは、発掘した新品の洗剤やゴミ袋、電池、ビニール紐の段ボールを抱えて外に出す。魔法なしで運んでるから、汗だくだ。

 お中元やお歳暮のタオルや調味料、油、ジュース、缶詰、石鹸、シャンプーセットとかも、箱のまま出て来た。箱もラベルもすっかり色褪せてる。缶詰は、缶が腐食して破裂して、箱に浸み出してるのもあった。

 三枝さんが呪文を唱える以外、みんな、無言でゴミ出しをした。


 心が空っぽになる。


 私とツネ兄ちゃんも、汗だくになっていた。

 息苦しくなってきたけど、ここでマスクを外すと、大変な事になる。

 早く終わらせる為に、どんどん手を動かして、ゴミ袋を外に出す。

 外で深呼吸して、すぐ作業に戻る。

 「廊下に埋まってたものだけで、もう充分なんで、棚は丸ごと焼いちゃって下さい」

 お兄ちゃんが言うと、ノリ兄ちゃんはクロエさんに指示を出して、棚をゴミ焼き用の円の周囲に集めさせた。

 黴や埃でドロドロの棚が円陣を組む。


 異様な光景。


 キレイな庭で見て、改めて、こんな物が家にあった事の異常さを思い知る。

 家にあっただけ。全く使ってない。

 いつからあるかすら、わからない。


 ただの障害物。


 ノリ兄ちゃんは、障害物の周囲に線を引きながら、呪文を唱えた。円が完成して、真っ暗になる。広くなったゴミ焼き円で、白い炎が全てを焼き尽くす。

 私は中に戻って、作業を続けた。

 台所まで後、一部屋分だ。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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