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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第二章 賢治の十二月二十五日

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041.現金

 俺、真穂、ツネ兄ちゃんの三人で、靴箱の上の不燃物も可燃物もいっしょくたに、ゴミ袋に放り込む。

 何故か、硝子(ガラス)製のごつい灰皿が出て来た。

 双羽(ふたば)さんに洗ってもらい、発掘した小銭を入れる。硬貨はどれも、素手で触る事すら躊躇(ためら)うレベルの物ばかりだった。

 何の金か知らないが、千九百八十円入った茶封筒も出て来た。

 封筒はヘンな染みが付いている。現金だけ灰皿に入れた。


 他は、観光地土産の置物、ミニ提灯、木彫りの熊、干からびた水槽、枯れた盆栽、河豚提灯(ふぐちょうちん)埃塗(ほこりまみ)れの翡翠(ひすい)の馬、翡翠の鶏。吸殻山盛りの陶器の灰皿、紙袋、紙箱だった。

 翡翠の鶏は何故か、温かかった。明らかに中に何か居る。

 思わず落としたら、丁度、ツネ兄ちゃんのゴミ袋に入った。


 紙箱の内二つは、中身が入っていた。

 真穂が蓋を開けると、雑妖が飛び出して来た。

 イヤなびっくり箱だが、視えなければ何ともない。

 薄紙に包まれた桐の下駄と、草履。箱は汚いが、中身は汚れていない。

 「どうする? 置いとく?」

 「お祖父ちゃんとお祖母ちゃんのみたい……これはまぁ、置いとこっか」

 一応、真穂にも聞き、意見が一致したので、箱は捨てて中身だけ倉庫の前に置いた。


 三人掛かりで合計六袋を満タンにして、靴箱の上から物がなくなった。

 現金入りの灰皿だけ倉庫前に置き、三和土(たたき)の小銭を一緒にする。

 「この靴箱は、どう?」

 「開けちゃいけない気がします」

 「クロエ、この靴箱も、先程の円に運びなさい」

 ツネ兄ちゃんに聞かれたが、イヤな予感しかしなかった。


 どの靴箱も、鼠や害虫……だけじゃなくて、化け物の巣だ。

 このまま焼いてもらうのが、一番いい。


 でかい靴箱は二つとも、背板が(カビ)で真っ黒だ。中身も多分、そうだろう。

 完全に空っぽになった玄関を、双羽さんが水で丸洗いする。壁にこびり付いていた埃やヤニがごっそり取れる。

 水の汚れをゴミ袋に捨て、清水で廊下と玄関の間に壁を作った。

 「ちょっと待ってね」

 ノリ兄ちゃんが、何もない玄関に入る。杖を引きずりながら、呪文を唱える。

 歌うような不思議な抑揚だ。三和土(たたき)と同じ大きさの矩形が完成する。

 ノリ兄ちゃんは、三和土(たたき)の中心に立ち、結びの言葉を唱え、石突きでトントンと足元を打った。

 杖で囲んだ範囲が、明るくなった。

 光が点った訳ではない。

 ただ、場が目も醒める鮮烈な明るさに切り替わった。

 画像処理ソフトで、写真の明度をいじったみたいだ。

 「玄関を安全地帯にしたよ。雑妖はここから外に出られなくなったからね」

 「えっあ、ありがとうございます」

 ノリ兄ちゃんは、それだけ言うと、庭の安全地帯に戻った。

 山端家の間取図-玄関-清掃後

 挿絵(By みてみん)

 玄関を安全地帯にしたよ。

 玄関の色が付いている部分は三和土(たたき)。宗教の魔法で一時的に安全地帯になっている。

 ※茶色=収納家具やガラクタや、ゴミ等の堆積エリア。

 ※黒色=部屋の存在すらよくわからない不明なエリア。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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