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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第二章 賢治の十二月二十五日
40/130

040.靴箱

 古い家なので、間口は広い。

 玄関の三和土(たたき)は、畳を横に三枚並べたくらいある。

 戸口に対して直角に、背の低い靴箱が置いてある。上には色んな物がごちゃごちゃ乗っていて、もれなく埃を被っている。


 現金以外の物は要らん。


 靴箱は他にも二つある。

 戸を半分塞ぐ形で、二メートル級の傘立てが置いてあった。その隣に、天井まで高さのある靴箱が二つ、向い合せに(そび)え、文字通り双璧を成している。


 人数に対して、靴が多過ぎる。

 履けない靴を捨てさせてくれない理不尽。


 「真穂、そっち宜しく。俺、こっちの大きい方やるゎ」

 「了解」

 どうせ中身は全部朽ちてる。

 何も見ないで捨てよう。

 「外の方が作業しやすいでしょう。クロエ、奥の靴箱をひとつずつ、ここに置きなさい」

 双羽さんが、玄関から十歩くらい離れた場所を指差す。

 クロエさんはイイお返事をして、靴箱に近付いた。

 「あ、これ、中身入ってるんで」

 「そうですか」

 「いや……そうですかって……」

 クロエさんは、それ以上俺に構わず、傘立ての隣だった靴箱に手を添えた。

 特に呪文を唱えた様子はない。

 クロエさんは、空の段ボールでも動かすように、ひょいと靴箱を持ちあげた。斜めにして、天井に当たらないよう、方向転換する。

 俺は、廊下に上がった。ツネ兄ちゃんと真穂が外に出る。

 中の物が動く重い音がしているが、クロエさんは顔色ひとつ変えずに出て行った。

 地面に置く音は、明らかに相当な重量物のそれだった。

 「クロエの事も後で説明するよ。さっさとやろう」

 「は、はい。あ、その靴箱、開けない方がいいと思うんで、もう、丸ごとポイで……」

 ツネ兄ちゃんに言われ、真穂が言うと、クロエさんは首を傾げた。

 「クロエ、その靴箱は二つとも、先程の円に運びなさい」

 ゴミ焼きはとっくに終わっていた。

 双羽さんは水を操り、三枝さんが広げたゴミ袋に灰を移していた。

 クロエさんはイイお返事をして、イヤな顔ひとつせず、靴箱を運んだ。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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