表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第二章 賢治の十二月二十五日

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/130

035.許諾

 「さっきみたいに、お庭でゴミ焼きしてもいいですよね?」

 「はい! 大変結構でございます!」

 ノリ兄ちゃんに聞かれ、大笹(おおささ)消防団長は、背筋を伸ばして敬礼した。駐在さんと隣保長の大山(おおやま)さんが、俺と真穂に助けを求めるような目を向けた。


 俺も知らない。


 「えー……それでは、何かございましたら、何なりとおっしゃって下さい」

 「辺鄙(へんぴ)な場所ではありますが、精一杯、させて戴きます」

 駐在さんと九斗山(くどやま)区長が最敬礼する。

 ノリ兄ちゃんは気さくに「じゃ、また後で~」と、手をひらひら振る。

 四人は首を傾げながら、去って行った。


 「大掃除する前に屋敷神様にご挨拶しよう」

 ツネ兄ちゃんが、蔵の脇に向かう。そっちを見ると、あたたかい光を感じた。

 敷地の隅に小さな祠があった。蔵と塀の間は木々が生い茂り、午前中なのに暗い。石造りの祠は木の格子戸が閉まっていた。

 お供えの白い皿には何もない。

 多分、さっき双羽さんがゴミとか洗い流してくれたんだろう。

 格子戸の奥に小さな光が視えた。


 ツネ兄ちゃんがしゃがんで手を合わせる。何を祈ったのか、祠の光が明るくなった。

 ツネ兄ちゃんが終わると、ノリ兄ちゃんも同じように拝んだ。光が更に強くなる。

 場所が狭いから、一人ずつ交代で拝む。


 俺は、今まで放置していた事を謝り、今から大掃除するから見守って下さい、と祈った。

 ツネ兄ちゃんに共通語で説明され、最後に三枝さんが祈りを捧げる。

 祠の光は一人終わる毎に強くなり、今は眩しいくらいだ。

 肉眼には見えないのか、影はできない。なのに、枝葉の闇がこんなに明るいのが、不思議だった。


 「屋敷神様がね、今まで悪い物を外に出さないだけで精一杯だったって言ってたよ」

 「穢れがなくなれば、元の力を取り戻せるかも知れないってさ」

 ノリ兄ちゃんとツネ兄ちゃんが、俺と真穂に屋敷神様の言葉を伝える。


 当たり前みたいに言うけど、二人とも霊能者か何かなのか?


 借り物の霊視力では、神様の言葉は聞こえなかった。

 でも、何となく気持ちはわかった気がする。

 「頑張ります」

 俺は祠に深く(こうべ)を垂れた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ