表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第二章 賢治の十二月二十五日
34/130

034.灰燼

 ノリ兄ちゃんはマイペースに呪文を唱え、杖の石突きで地面をトントンと打った。

 円柱の中で、白い炎が揺らめく。

 皆既日食観察用の眼鏡越しに見た太陽を思い出した。


 「灰を入れる袋をご用意下さい」

 双羽(ふたば)さんに言われ、真穂が弾かれたように母屋へ走る。

 障害物を避けなくてよくなり、三秒で玄関に着いた。戸を細く開け、素早く閉める。

 すぐにゴミ袋の束を抱えて戻った。


 「袋の口を開いて持って下さい」

 俺と真穂は、双羽さんの言う通り、ひとつのゴミ袋の口を広げて待った。

 ノリ兄ちゃんが何か言うと、円柱が消えた。

 跡には、真っ白な灰が積もっている。あの大量のガラクタとヘドロと雑妖は消えていた。


 金属とか結構あったのに、灰しかない。

 全部焼いたにしても、灰が少ない。

 双羽さんの指示で、水が地に降りた。

 四人が驚いて何か叫ぶ。

 双羽さんはそれに構わず、水を這わせた。


 ノリ兄ちゃんが杖で地面を擦って、円の一部を消す。水はその隙間から入り、灰を溶かして出て来た。

 灰色の水が大蛇のように伸びて、ゴミ袋に頭を突っ込む。水の先から灰が吐き出され、ゴミ袋はすぐ満タンになった。

 農道から見えているのかと思うタイミングで、水が引っ込む。


 俺が袋の口を括り、真穂が次の袋を広げる。

 庭を埋め尽くしていたガラクタとヘドロと雑妖は、45Lのゴミ袋六杯分の灰になった。

 本気の産廃ばっかりで、どうやって処分しようかと思っていた物が、三十分足らずで片付いた。


 ノリ兄ちゃんと三枝さんが農道に戻ってきた。

 双羽さん、三枝さん、クロエさんがノリ兄ちゃんの傍に控える。

 「何度も同じ説明するの面倒だから、詳しい話はまた後でお願いします。今の僕は、山端(やまばた)家の外孫という事で、護衛は、この二人が居ますから、大丈夫ですよ」

 小さな女の子みたいに可愛い声で、口調も丁寧なのに、有無を言わせない何かがあった。

 山端家の間取図-庭-清掃完了

 挿絵(By みてみん)

 本気の産廃ばっかりで、どうやって処分しようかと思っていた物が、三十分足らずで片付いた。

 時期的に、柿は落葉している。図は便宜上、葉がある状態で枝の範囲を示した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ