033.王族
「えっと、お久し振りです。お祖母ちゃんが怪我したんで、大掃除をちょっと……」
「お久し振りです。瑞穂の次男、経済です。あちらは三男の宗教です」
「おぉおぉ、ツネちゃんか。大きゅうなって……」
俺の隣に進み出たツネ兄ちゃんに、九斗山長老が顔をくしゃくしゃにして喜ぶ。
後の三人は、胡散臭そうな目で庭のノリ兄ちゃんを見た。
上等な薄手のコートを着て、怪しい杖を持って、可愛い声で何かブツブツ言っている。
どう見ても不審者ですありが(ry
ノリ兄ちゃんが詠唱を終えると、ヘドロと雑妖とガラクタの円柱が、真っ暗になった。
突然、漆黒に染まった円柱に、地元の大人四人が口をあんぐり開ける。
「不用品の焼却処分をなさっている最中です」
双羽さんの説明に四人が顔を見合わせた。訳がわからなくて当然だ。
俺もわからん。
「県警本部から、外国の王族がお忍びでいらっしゃるげ、しっかり警護するよう、連絡があったんだが……」
「王族?」
駐在さんにもっと訳のわからない事を言われ、俺と真穂は困惑した。
「まさか、そんなエライお人が、こんなド田舎に来るワケないわいと、タカを括っとったげ、さっき、ここまで警護して来たっちゅう機動隊が来てな……」
「どちらさんが、その、外国の王族でございましょうや?」
大笹消防団長が、金髪碧眼の双羽さんから目を逸らしながら聞く。
視線の先に居たクロエさんも外国人だと気付き、消防団長は目を泳がせた。
えっ? あれ? マー君の車にくっついて来たあれ、覆面パトカー……?
「複雑な事情があって、説明すると長くなるんですが、宗教ですよ。警護もお断りしたんですけどね……」
四人はツネ兄ちゃんと、漆黒の円柱の前に立つノリ兄ちゃんを交互に見た。