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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第二章 賢治の十二月二十五日
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031.魔法

 「あ、あの……それ、ひょっとして、魔法、ですか?」

 「そうだよ。あれっ? 聞いてないの?」

 真穂の自信なさげな質問にあっさり答え、ノリ兄ちゃんは首を傾げた。


 聞いてない! 聞いてないよ!

 従兄(いとこ)が魔法使いとか、聞いてないよ!


 「(ともえ)の家系で魔法使いなのは、僕だけだよ」

 「その説明も後でな。さっさと掃除しよう」

 ツネ兄ちゃんが言うと、雪の塊が動き出した。

 双羽(ふたば)さんが、雪の塊から目を離さず言う。

 「私と三枝(さえぐさ)も魔法使いです。庭の不用品はどれですか? 除雪のついでに移動させます」

 「不用品……ゴメンナサイ。物干し台以外、全部ゴミでゴメンナサイ」

 「えッ? 全部?」

 真穂が頭を下げると、ツネ兄ちゃんとノリ兄ちゃんの声が重なった。双羽さんも驚いた顔をしている。

 「何か、ホント、すんません……」

 俺も申し訳なさで居たたまれなくなり、深々と頭を下げた。

 「二人が生まれる前からこうだったよ。どうせお祖父ちゃんだろ? 謝らなくていいよ」

 ツネ兄ちゃんが吐き捨てるように言った。

 ツネ兄ちゃんは、瑞穂伯母さんが亡くなってから、一度も来ていない。


 そんな昔からこうなのか。


 俺達の母さんが居た頃は、もう少しマシだったような覚えがある。

 気を取り直した双羽さんが、知らない言語で何か言う。

 魔法の呪文なんだろう。

 誰かに命令するような口調で何か言うと、雪の塊が一瞬で解け、水が庭のガラクタを押し流した。

 倉庫と蔵の屋根から、雪が全て滑り落ちる。

 古タイヤも壊れ農機も何もかもが、魔法の洪水に呑まれる。

 庭の雪と混ざり、嵩を増して渦を巻く。俺達が出したゴミ袋も、破れマルチや割れ植木鉢も、全部が一カ所に集められ、庭が広くなった。

 巨大な洗濯機のような渦が築いたガラクタの山は、二階建ての屋根より高い。

 ヘドロと雑妖も一緒に集められた。でも、すぐにどろりと広がって、庭が肉眼では見えないヘドロに沈む。

 母屋の前で物干し台だけが、ポツンと立っている。

 山端家の間取図-庭-掃除中

 挿絵(By みてみん)

 二階建ての屋根より高いゴミタワー。

 時期的に、柿は落葉している。便宜上、葉がある状態で枝の範囲を示した。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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