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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第二章 賢治の十二月二十五日
29/130

029.視力

 知らない人が五人。内、三人は明らかに外国人。

 思ってたのと違う人が、自発的に手伝いを申し出てくれた。

 ありがたいけど、よくわからん状況。

 共通語会話には自信あるけど、何と言えばいいかわからない。

 俺と真穂は、途方に暮れて立ち尽くした。


 「まずは……雪を除ければ宜しいですね?」

 「は、はいッ!」

 双羽(ふたば)さんに聞かれ、俺と真穂は思わず背筋を伸ばして、駐在さんのように敬礼した。

 双羽さんはおバカな兄妹に構わず、初めて耳にする響きの言葉で何か言いながら、右手を横に伸ばした。

 敷地の前で手を上げ、バックオーライの動きをする。


 「あ、そうだ。二人とも、おうちが今、どんな状態かちゃんと視てみる?」

 ノリ兄ちゃんの質問の意図がわからない。

 俺と真穂は首を傾げた。

 ツネ兄ちゃんが、眼鏡を押し上げて呟く。

 「視えてたら、こんな状態を放置できる訳ないもんな……」

 「はい。あの、ゴメンナサイ。ウチはどっからどう見ても最悪なゴミ屋敷です。それはよくわかってます。でも、好きで放置してるんじゃないんです」

 真穂が深々と頭を下げる。

 ノリ兄ちゃんは、真穂に顔を上げさせ、説明を始めた。

 「あ、違うの。そう言う意味で言ったんじゃないの。あのね……」


 魔法文明国では、所謂「霊感」がある人が普通だ。物質と霊質の両方が視えて当たり前。

 物質しか見えない人は「半視力(はんしりょく)」と呼ばれ、保護の対象になる。

 日之本帝国などの科学文明国では、半視力が普通で、霊視力を持つ人は少ない。


 「半視力の人用に、視力を一時的に貸す術があるんだけど、視てみる?」

 「……えっと……何が視えるようになるんでしょう?」

 話が見えない。

 俺は恐る恐る手を挙げて、ノリ兄ちゃんに質問した。

 「いっぱい居るよ」


 何がッ?


 「宗教(むねのり)、それじゃわかんないだろ。……死骸やガラクタから湧く奴とか、自然に居る奴とか、とにかく、雑多な妖魔が庭にギッチギチに詰まってて、足の踏み場もない。屋根にもぎっしり乗ってるし、壁にも貼り付いてて、家が物理的に見えないんだ」

 ツネ兄ちゃんが、淡々と説明してくれた。

 俺と真穂は振り向いて、別な意味で驚いた。

 雪の塊が宙に浮いている。

 屋根の雪が全くない。

 勿論、妖魔は視えない。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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