028.異質
最後に金髪の女性が降りて、扉を閉めた。
よく見ると、先に降りて来た黒髪の大男も、目が青くて顔立ちがどう見ても日之本帝国人ではない。
クォーターの高志伯父さんで大騒ぎなら、今日はどれだけの騒ぎになるんだろう。
「あの……そちらの方達は?」
誰に聞けばいいかわからず、七人を見回して質問する。
「こいつは俺の息子の政晶。政晶、本家の内孫の賢治君と真穂ちゃん。俺達の従弟妹だ」
「初めまして。政晶です。あの、大掃除、僕も手伝いましょか?」
マー君の息子は、商都弁だった。
女性のどちらかが母親……にしては、若過ぎる。
「政晶君はまだ小さいし、影響受けるとよくないから、政治と一緒に分家で休んでて。それで、えっと、この人達は……何度も説明するの面倒だから、後でちゃんと紹介するよ。取敢えず、呼び名だけ……」
ノリ兄ちゃんに言われて、政晶君は素直に助手席に戻った。
マー君もいつの間にか、運転席に座っている。
金髪の女性が口を開いた。
「私は双羽とお呼び下さい。こちらの者は三枝。元の名はこの国の方には発音が難しいので、訳した呼び名です。三枝は臨時の増員で、この国の言葉はわかりません。母国語の他は共通語などがわかります」
双羽さんは、完璧な発音の標準日之本語で、黒髪の大男を紹介した。
三枝さんが小さく頭を下げる。
双羽さんと三枝さんは似た服装だ。
トレンチコートの左襟に同じマークが付いている。白い花が付いた盾と、盾の後ろで剣と魔女の杖が交叉したデザイン。
右襟のマークは、双羽さんが二枚の羽、三枝さんが三本の枝。右は家紋なのかもしれない。
スラックスに、不釣り合いなごついブーツ。二人とも、二十代後半から三十代前半くらいに見えた。
「クロエ、挨拶して」
「クロエと申します」
ノリ兄ちゃんに促されて、メイドが優雅にお辞儀した。
クロエさんも、瞳が琥珀色で、日之本帝国人ではなさそうだ。この辺だけ、異次元過ぎる。
「経済は?」
「宗教がいるんなら、ここに居る」
「あっそ、じゃ、俺は分家で寝とくわ」
マー君はさっさと行ってしまった。