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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第二章 賢治の十二月二十五日
26/130

026.従兄

 ここから賢治視点。

 深夜に雲が出て、夜明け前まで大雪が降った。

 真穂と二人、うんざりしながら、実家の雪下ろしをする。

 大学のある商都(しょうと)では、滅多に雪が降らない。水道の凍結対策やタイヤチェーンすら不要だった。

 四年ぶりの雪下ろしで、筋肉痛になったが、真穂一人に苦労させる訳にはいかない。

 覚られないよう、黙々と雪を下ろす。

 「あれっ? 誰だろ?」

 真穂が手を止めて町道の方を見た。

 ここは閉鎖的な過疎地で、家族構成から所有する車、昨日の晩ご飯までみんな知っている。

 真穂は車を不審げに注視していた。

 雪が積もった田畑の間にポツポツ家があるだけで、隠れる所はどこにもない。


 一昨日の俺も、村の人にこんな風に見られてたんだろうな。


 車は二台。

 どちらが「不審車」かわからない。前をワンボックス、後ろをセダンが走っている。車間距離は五台分。セダンはスノータイヤを履いてるっぽい。ワンボックスはノーマルにチェーンを巻いていた。

 ワンボックスが農道に入り、近付いてくる。

 真穂が、助けを求めるような目で俺を見た。

 俺は車から目を離さず、小さく頷いた。

 都会なら、知らない車が走っていても、当たり前。知っている車の方が少ない。知らない車に怯えた目をする妹が、不憫だ。

 ワンボックスがウチの前で停まった。

 車間距離を保ち、セダンもウチの畑の前に停まる。

 「着きました。もうここで結構です。ありがとうございました」

 ワンボックスの運転席を開け、男が言うと、セダンはハザードを点滅させ、後退した。町道に戻って方向転換し、走り去る。

 稲藁色の髪の男は、セダンが見えなくなるまで見送って、ウチの敷地に入ってきた。

 「ケンちゃん久し振りー。そっちは真穂ちゃん? 二人とも大きくなったなー」

 俺は真穂に頷いて見せ、屋根から降りた。そのまま勢いに任せて駆け寄る。


 助っ人キターッ!


 「マー君! 久し振りー。元気だった?」

 「あぁ、元気元気。ケンちゃん達も元気そうでよかった」

 後部扉が開き、マー君と同じ顔に眼鏡を掛けた人が降りて来た。ツネ兄ちゃんか、ノリ兄ちゃんだ。

 どっちかわからない。

 眼鏡の人は敷地には入らず、農道から自己紹介した。

 「初めまして。従兄(いとこ)経済(つねずみ)です。この名前、言い(にく)いし、好きに呼んでくれていいよ」

 屋根から降りて来た真穂が、嬉しそうに挨拶する。

 「えっと、ツネ兄ちゃんって呼んでもいいですか? あ、私、真穂です。初めまして」

 「それでいいよ」

 「真穂の兄の賢治(けんじ)です」

 俺も農道に出て名乗った。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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