024.記憶
今夜はすき焼きだった。
みんなで鍋をつつきながら、従兄の事を話す。
「明日来る従兄って、どんな人?」
コーちゃんが、米治叔父さんに聞く。
叔父さんは糸こんにゃくをすすりながら、記憶の糸を手繰り寄せた。
「なんせもう、十年以上会っとらんげなぁ……」
そう前置きしつつ、ポツリポツリと説明してくれた。
話している内に思い出して来たのか、だんだん詳しくなってくる。
瑞穂伯母さんの旦那さんの高志さんは、クォーターだ。
どこの国か忘れたけど、高志さんのお祖母さんが外国人。
それ以外はみんな、日之本帝国人だけど、高志さんはお祖母さんの血が強いのか、パッと見、日之本帝国の血が入っているようには見えなかった。
「結婚の挨拶ん時、『瑞穂が外国へ嫁ぐ』って、村中大騒ぎになっとったげ」
誤解を解いて、説得して結婚するまで三年程掛かった。
高志さんは、仕事が忙しくなったとかで、それっきり一度も来なかった。
なかなか子宝に恵まれず、思い切って不妊治療を受け、三つ子が生まれた。
三人とも男の子で、戸籍上の長男が政治君、次男が経済君、三男が宗教君。宗教君は、生まれつき内臓に障碍を持っていた。
「姉ちゃんは盆暮れ正月、マー君とツネちゃんだけ連れて帰ってきて、宗教君の世話が大変だって愚痴ってたげな」
次男の経済君は毎回、本家の敷地に入るのを泣いて嫌がっていた。
「『おばけがいっぱいだからヤダ』っつってな。その度に姉ちゃんにひっぱたかれて、黙らされて、可哀想だったげなぁ……」
あぁ、うん。ごめんなさい。
お化けが居ても何の不思議もないゴミ屋敷でゴメンナサイ。
って言うか、ウチって昔からゴミ屋敷なんだ……




