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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第一章 真穂の十二月

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023.湿布

 「あ、そうだ。洗剤湿布(せんざいしっぷ)

 「なんだそりゃ」

 思わず呟いた私に、お兄ちゃんが首を傾げた。

 「洗剤を染み込ませたトイレットペーパーとかを汚れに貼り付けるの。湿布みたいに」

 イメージを掴めたお兄ちゃんは、私と一緒にトイレに戻った。

 まずは男性用小便器。マスク越しでも臭いがキツイ。

 洗剤を万遍(まんべん)なくスプレーして、トイレットペーパーを貼り付けて、またスプレー。ボトル一本分使い切って、トリガーを握り続けた腕がパンパンになった。

 洋式はお兄ちゃんがしてくれた。カバーを外すと、便座の裏も茶色く変色していた。


 私は発掘した業務用サイズの塩素系漂白剤を持って、風呂場へ行った。

 洗面器に漂白剤を注ぐ。

 目にしみた。

 窓を全開にする。

 カラーボックスに入っていた現役のタオルを全部、風呂場に運ぶ。

 雑巾同然のボロタオルを雑巾として活用する。漂白剤の原液に漬けて、絞らずに壁に貼り付ける。

 壁は悪い意味でカラフル。

 洗面器に何度も原液を足して、ひたすら壁に雑巾を貼る。

 トイレ作業が終わったお兄ちゃんが、高い所に貼ってくれた。最後に床にも貼り付ける。

 天井はどうしようもないから、また別の方法を考えないと。

 外に出ると、すっかり真っ暗になっていた。


 冬至から二日しか経っていないから、日が短い。

 一年のどん底。

 でも、これから上がって行く方の底だ。


 雪でゴム手袋を洗って、マスクを捨てて、レインコートを脱いで、分家に戻る。

 途中、晩ご飯に呼びに来たコーちゃんと合流して、一緒に帰る。

 街灯のない雪道は、真っ暗な筈なのに何故か明るく見えた。今夜は雲がなくて、星が空いっぱいに輝いている。

 寒いけど、キレイだ。


 これなら、明日は雪下ろししないで済むかな。

 余計な作業が減れば、その分、大掃除が進む。

 それだけで、こんなに足が軽い。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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