020.洗面
洗面台は、作り付けの棚と一体化しているタイプ。
天井までの高さで、上と足元に両開きの戸棚。右側が洗面。左側は化粧スペース。左側の下段には、引出しがある。
引出しの前には、タオルや石鹸がぎゅうぎゅうに詰まったカラーボックスがあって、開けられなかった。
洗面台の収納スペースは、石鹸、シャンプー、リンス、コンディショナー、化粧水、化粧品サンプル、剃刀、入浴剤、歯ブラシ、歯磨き粉、義歯安定剤とかがぎっしり……どころか、溢れている。
引出しは、どの段も閉まりきらない。
一番上の段は、三分の一くらい引き出したまま、その上に色々な物が積んである。
カラーボックスと洗面台の隙間は物がきっしりで、何かを取ろうとすれば、確実に崩壊する。
化粧スペースは、物がいっぱいで使用不能。
鏡が見えない。
古歯ブラシを捨てさせてくれなくて、茶筒に入れて置いてある。
水を流す部分だけは、私がちょくちょく磨いているから、まぁまぁキレイ。
古歯ブラシの茶筒は、掃除用にひとつだけ残して、後は全部ゴミ袋へ。
化粧品のサンプルも、どうせ使わないから全部捨てた。
カラーボックスの上には、タオルの箱が積み上がっている。「お中元」の熨斗はすっかり色褪せていた。
全部が同じ大きさではないから、はみ出した部分には、埃が積もっている。タオル箱の塔を崩さないように、そっと床に下ろす。
カラーボックスの棚上段は、現役のタオルがギュウギュウ詰め。下段は石鹸の箱。
これもお中元の熨斗が付いたまま。石鹸だけ出して、カラーボックスを持ち上げる。
ガコッ
カラーボックスの底が抜け、背板が落ちた。背板が落下の衝撃でバラバラになる。
ついでに、引出しの上に乗っていた物も落ちた。
カラーボックスは、壁に近い部分が腐って朽ちていた。側板も、三分の一くらい腐っている。
タオルを出して、お中元箱の上に乗せ、カラーボックスは捨てた。
壁には、カラーボックスの形に埃の塊と蜘蛛の巣がこびりついて、黴だらけだった。
タオルを一枚取って壁を拭き、ゴミ袋へ。拭き跡が却って汚く見える。
床に散らばった化粧品、歯磨き粉の空チューブ、錆びた剃刀や空き箱も、全部まとめてゴミ袋へ。
引出しの中を覗くと、ここにも糞と死骸と綿埃と、髪の毛が入り込んでいた。