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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第一章 真穂の十二月
20/130

020.洗面

 洗面台は、作り付けの棚と一体化しているタイプ。

 天井までの高さで、上と足元に両開きの戸棚。右側が洗面。左側は化粧スペース。左側の下段には、引出しがある。

 引出しの前には、タオルや石鹸がぎゅうぎゅうに詰まったカラーボックスがあって、開けられなかった。

 洗面台の収納スペースは、石鹸、シャンプー、リンス、コンディショナー、化粧水、化粧品サンプル、剃刀(かみそり)、入浴剤、歯ブラシ、歯磨き粉、義歯(いれば)安定剤とかがぎっしり……どころか、溢れている。

 引出しは、どの段も閉まりきらない。

 一番上の段は、三分の一くらい引き出したまま、その上に色々な物が積んである。

 カラーボックスと洗面台の隙間は物がきっしりで、何かを取ろうとすれば、確実に崩壊する。

 化粧スペースは、物がいっぱいで使用不能。

 鏡が見えない。

 古歯ブラシを捨てさせてくれなくて、茶筒に入れて置いてある。


 水を流す部分だけは、私がちょくちょく磨いているから、まぁまぁキレイ。


 古歯ブラシの茶筒は、掃除用にひとつだけ残して、後は全部ゴミ袋へ。

 化粧品のサンプルも、どうせ使わないから全部捨てた。

 カラーボックスの上には、タオルの箱が積み上がっている。「お中元」の熨斗(のし)はすっかり色褪せていた。

 全部が同じ大きさではないから、はみ出した部分には、埃が積もっている。タオル箱の塔を崩さないように、そっと床に下ろす。

 カラーボックスの棚上段は、現役のタオルがギュウギュウ詰め。下段は石鹸の箱。

 これもお中元の熨斗(のし)が付いたまま。石鹸だけ出して、カラーボックスを持ち上げる。


 ガコッ


 カラーボックスの底が抜け、背板が落ちた。背板が落下の衝撃でバラバラになる。

 ついでに、引出しの上に乗っていた物も落ちた。

 カラーボックスは、壁に近い部分が腐って朽ちていた。側板も、三分の一くらい腐っている。

 タオルを出して、お中元箱の上に乗せ、カラーボックスは捨てた。

 壁には、カラーボックスの形に埃の塊と蜘蛛の巣がこびりついて、黴だらけだった。

 タオルを一枚取って壁を拭き、ゴミ袋へ。拭き跡が却って汚く見える。

 床に散らばった化粧品、歯磨き粉の空チューブ、錆びた剃刀や空き箱も、全部まとめてゴミ袋へ。

 引出しの中を覗くと、ここにも糞と死骸と綿埃と、髪の毛が入り込んでいた。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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