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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第一章 真穂の十二月
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002.携帯

 私は二階の自分の部屋に戻って、ケータイで真知子(まちこ)叔母さんに助けを求めた。

 声は一階まで聞こえないと思うけど、念の為、メール。

 このケータイは、米治(よねじ)叔父さんが契約して貸してくれた物だ。

 通話料も出してくれてるから、申し訳なくて緊急連絡以外には、使った事がない。


 お祖父ちゃんとお父さんは、私の事が嫌いで、高校に行く事すら反対していた。

 歌道寺(うどうじ)の住職さん達が、「今時は高校くらい出してやるもんだ。それとも、山端(やまばた)家は娘を進学させてやれんくらい、落ちぶれてしまったのか?」って言ってくれたお蔭で、進学させてもらえた。

 女に学問なんかいらんのにって、凄くイヤそうに恩着せがましく言われたけど、そんなにイヤなら、私をお母さんと一緒に住ませてくれればいいのに。

 それはさせてくれない。

 ケータイも、「女のお前に掛ける金なんかない。無駄だ」って断られた。

 米治叔父さんに、バイト代でケータイ代を返そうとしたら、「えぇが、えぇが」って受け取って貰えなかった。

 お父さんの弟なのに、何でこんなに違うんだろう。


 真知子叔母さんから、返信が来た。

 件名に用件が書いてあって、本文は空だった。


 Re:旦那にお酒もつて行かせるからもうちよつと待つて


 偶然のフリをして、病院に連れて行ってくれる。

 泣きそうになりながら、お礼を返信して、部屋を出た。


 自分の部屋には、最低限の物しか、置いていない。

 毎日、掃除して換気して、ここだけ別の家みたい。

 一階の廊下を歩いたスリッパは、部屋の前で脱ぐ。


 二階の廊下は、本棚とカラーボックスで埋まっている。

 廊下の両側に棚があって、体を横にしないと通れない。本棚やカラーボックスの上にも段ボールが積み上がっていて、地震が起きたら絶対ヤバイ。

 二階は多分、二部屋が開かずの間状態。

 大きな本棚で入口が塞がってる。私の部屋とお兄ちゃんの部屋、ゆうちゃんの部屋の入口だけが開いている。

 床だけは、物を置かないようにしている。

 古新聞、古雑誌は束ねて、学校のリサイクル箱に持って行く。「学校で要るから」と言えば、流石に反対されなかった。


 階段も古新聞、古雑誌の束が、各段に私の身長と同じくらいまで詰み重なって、埃を被っている。

 壊れた家電、壊れた石油ストーブとか、ガラクタも置いてあって、その上にも中身が詰まった段ボールが詰んである。

 中身は知らない。

 倒したら大惨事なので、階段を通る時は、慎重に慎重を重ねて、凄く神経を使う。


 やっとの思いで階段を降りた。

 ミイラ取りがミイラにならないよう、慎重に近付く。

 お祖母ちゃんの冷えた肩を膝掛けとハーフケットで包んで、耳元でこっそり伝えた。

 「もうすぐ、米治叔父さん、来てくれるから」

 「ごめんね……真穂ちゃん、ごめんねぇ……」

 お祖母ちゃんは、泣きながら手を合わせて、私を拝んだ。

 私は何も言えなくなって、お祖母ちゃんを抱きしめて肩をさすった。


 山端家の間取図-2階-初期段階

 挿絵(By みてみん)

 ※青線=窓。賢治と真穂の部屋と、真穂の部屋の前の廊下以外は開けられない。

 ※茶色=収納家具やガラクタや、ゴミ等の堆積エリア。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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