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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第一章 真穂の十二月
19/130

019.便所

 脱衣所の床の分だけで、米治叔父さんの軽トラはいっぱいになった。過積載っぽいけど、上からブルーシートを掛けて固定する。

 「じゃあ、すみません。お願いします」

 「ケンちゃん達が謝るこっちゃねぇ。気にすんな」

 米治叔父さんは軽く言って、クリーンセンターに向かった。


 私とお兄ちゃんは、ゴム手袋、レインコート、新品のマスクを装備して、土足で突入。

 バスマットで床の埃を拭いて、ゴミ袋に入れた。積み重なっていた五枚を使い切っても、まだ床は汚い。

 最下層の一枚は、まだ動かせなかった。

 湿気でこびりついた埃や糞に黴が生えて、クッションフロアに根を下ろしていた。

 相変わらず、過剰在庫の段ボール壁はあるし、中身の残ったボトルもいっぱいある。

 床も汚い。

 でも、足の踏み場はできた。

 松葉杖でも何とか通れると思う。

 「ここからは手分けしよう。俺、トイレを片付けるから、真穂は洗面台を頼む」

 「うん、わかった」


 トイレは、手前が手洗い場と男性用小便器。奥が洋式トイレ。手前と奥は木の壁で仕切られている。

 洋式トイレのドアは、何十年も前の古いカレンダーが、釘に掛かったままになっている。お祖父ちゃんが月めくりの十二月分を外さずに、上から新年のを掛けるから。

 お父さんが煙草を吸うから、壁も天井も窓もカレンダーも、ヤニが染みついて茶色い。

 個室内の小さいカラーボックスには在庫ぎっしりで、その上にもいっぱい物が乗っている。吊り戸棚にもトイレットペーパーとかの在庫がぎっしり。

 私は手が届かないから、ここの物をとった事がない。

 床にはトイレットペーパーの芯と、洗剤や芳香剤の空容器が積み上がっている。

 手前のスペースもほぼ同じ。

 こっちは洗剤と芳香剤とトイレットペーパーの在庫の段ボールも積み上がっていた。細い通路を爪先立ちになって通っている。

 タオルは雑巾同然。

 何故かお祖父ちゃんは、毎年お中元でタオルを貰うのに、新品に替えさせてくれない。

 破れるまで使わなければ、怒られる。

 破れたのを捨てても、怒られる。


 私は、そんなトイレをお兄ちゃんに任せて、脱衣所の洗面台と向き合った。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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