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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第一章 真穂の十二月
18/130

018.廃棄

 とにかく、スペースを空ける為にひたすら、ゴミ袋に空ボトルを詰めた。

 多分、全部プラ容器だ。

 シャンプー、リンス、コンディショナー、ボディーソープ、お風呂の床用洗剤、浴槽用洗剤、ガラスクリーナー、排水溝用洗剤、トイレ用洗剤、洗濯用液体洗剤、柔軟剤、ヘアトニック、化粧水、うがい薬。それらの空ボトルが、脱衣所の床に林立している。

 お祖父ちゃんが、「瓶は後で使うから捨てるな」って捨てさせてくれないから。

 中身が入ったままの使いさしも多い。


 箱買いの段ボールは未開封のまま、天井近くまで積み上がっている。

 バスマットは、何枚も重なっている。

 最下層のマットの隅に段ボールの壁が乗っていて、びくともしない。それが黴て腐って気持ち悪いから、何枚も重ねて安全地帯を作っている。上のマットに黴が移ったら、新しいのを買って来る。

 古いのは小さく切って、ビニール袋に入れて、少しずつ学校の近所のゴミ箱に捨ててる。

 ホントはいけない事だって知ってるけど、家のゴミ袋に入れたら怒られるから。


 足の踏み場もないレベルでボトル類だらけの床は、当然、掃除できない。

 風呂場と洗濯機への道が、細く通っているだけだ。

 段ボールの傍は、ボトルの上にボトルが乗っている。

 積み上がったボトルとボトルの間には、灰色の綿埃や髪の毛、鼠や虫の糞、虫の死骸が、分厚く積もっている。ボトルの隙間を埋める様は、過剰包装の梱包材みたい。ボトルの肩と頭には、埃が盛り上がっている。

 こんな汚いの、分別したってリサイクルできっこないから、埃に包まれたボトルをそのままゴミ袋に入れる。


 ゴミ袋が満タンになる度に庭へ持って行く。

 満タンのゴミ袋を両手に持って、棚や段ボールで狭い廊下を体を横にして通り抜ける。

 外の空気を吸って、またゴミに埋もれた玄関と廊下を通って、ゴミだらけの脱衣所に戻る。

 二人とも無言。


 お兄ちゃんと二人で、何往復しただろう。

 脱衣所の床から、空ボトルがなくなった。

 ゴミ袋を置きに出ると、コーちゃんが黒い山の前で呆然としていた。

 「コーちゃん、どうしたの?」

 「スッゲー……………………」

 「でも、まだいっぱいあるから……」

 「でも、この分だけ、キレイになったんだよな? 二人ともスゲー」

 「危ないから、手伝わなくていいぞ」

 「あ、違う。メシ。昼ご飯できたから、呼んで来いって言われたんだ」

 ゴム手袋とレインコートを玄関脇の雪の上に置いて、マスクは捨てて分家に行った。


 玄関に入る前になるべく埃を叩く。

 手と顔を念入りに洗って、食卓へ。


 とんかつ、千切りキャベツ、ごはん、ホウレン草の味噌汁。米と野菜は分家の自家製だ。

 食事中、誰もゴミの話をしなかった。

 キレイな場所で温かいご飯にありついて、人心地ついた。少しの作業なのに、意外と疲れていた事に気付く。


 食器を片付けてから、コーちゃんが少し興奮気味にゴミ山の事を語った。

 「そうか。じゃあ、俺が軽トラで持ってくげ」

 「えっそんな悪いですよ」

 「なぁに、俺にとっても実家だげ。クリーンセンター行ってる間、中の掃除、頼むげな」

 お兄ちゃんが遠慮すると、米治叔父さんは笑って言った。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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