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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第一章 真穂の十二月
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014.帰省

 翌朝早く、真知子叔母さんのメールで目が覚めた。


 件名:おはよう二人とも家を出た旦那が迎えに行くからね


 いつも通り、本文のないメールだ。

 ビジネスホテルは、建物は古いけど、掃除が行き届いていて、シーツも清潔だった。

 清々しい気持ちで返信する。

 米治叔父さんが、いつものワゴン車で迎えに来てくれた。

 高速道路を使っても、片道二時間以上。歌道山町(うどうやまちょう)に着いたのは、お昼を少し過ぎた頃だった。


 分家で遅い昼食を戴いていると、庭に見慣れないバイクが入ってきた。

 「あら、早かったね」

 真知子叔母さんが出迎える。小さな荷物を抱えて入って来たのは、お兄ちゃんだった。

 「よ、久し振り。苦労押し付けて、すまんかった」

 お兄ちゃんは、いい意味で変わっていなかった。

 顔はちょっと大人っぽくなってるけど、それ以外は私の知ってるお兄ちゃんのままだ。

 「お兄ちゃん……!」

 色々な思いがごちゃ混ぜになって、それしか言えなかった。

 言葉にならない思いが、涙になって後から後から、溢れて来る。

 お兄ちゃんは、何も言わずに私の肩を軽く叩いて、落ち着くのを待ってくれた。


 叔母さんが、お茶を淹れながら聞く。

 「ケンちゃん、お昼は?」

 「有難うございます。サービスエリアで食べたんで、いいです」

 「あらあら、そんな他人行儀な……」

 「あ……つい、バイトの癖で……」

 お兄ちゃんは照れて笑った。

 「二人とも、移動で疲れてるげ、大掃除は明日からな。無理して怪我するとイカンげな」

 米治叔父さんの忠告に素直に従う事にした。お兄ちゃんが、見るからに疲れ切ってるから。


 私達が頷くと、米治叔父さんは意外な事を教えてくれた。

 「明後日……二十五日、ウチの藍とマー君達も帰って来るげ、手は増える。何とかなるげ、心配すんな」

 「マー君って、誰?」

 お兄ちゃんが首を傾げた。

 私も知らない。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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