014.帰省
翌朝早く、真知子叔母さんのメールで目が覚めた。
件名:おはよう二人とも家を出た旦那が迎えに行くからね
いつも通り、本文のないメールだ。
ビジネスホテルは、建物は古いけど、掃除が行き届いていて、シーツも清潔だった。
清々しい気持ちで返信する。
米治叔父さんが、いつものワゴン車で迎えに来てくれた。
高速道路を使っても、片道二時間以上。歌道山町に着いたのは、お昼を少し過ぎた頃だった。
分家で遅い昼食を戴いていると、庭に見慣れないバイクが入ってきた。
「あら、早かったね」
真知子叔母さんが出迎える。小さな荷物を抱えて入って来たのは、お兄ちゃんだった。
「よ、久し振り。苦労押し付けて、すまんかった」
お兄ちゃんは、いい意味で変わっていなかった。
顔はちょっと大人っぽくなってるけど、それ以外は私の知ってるお兄ちゃんのままだ。
「お兄ちゃん……!」
色々な思いがごちゃ混ぜになって、それしか言えなかった。
言葉にならない思いが、涙になって後から後から、溢れて来る。
お兄ちゃんは、何も言わずに私の肩を軽く叩いて、落ち着くのを待ってくれた。
叔母さんが、お茶を淹れながら聞く。
「ケンちゃん、お昼は?」
「有難うございます。サービスエリアで食べたんで、いいです」
「あらあら、そんな他人行儀な……」
「あ……つい、バイトの癖で……」
お兄ちゃんは照れて笑った。
「二人とも、移動で疲れてるげ、大掃除は明日からな。無理して怪我するとイカンげな」
米治叔父さんの忠告に素直に従う事にした。お兄ちゃんが、見るからに疲れ切ってるから。
私達が頷くと、米治叔父さんは意外な事を教えてくれた。
「明後日……二十五日、ウチの藍とマー君達も帰って来るげ、手は増える。何とかなるげ、心配すんな」
「マー君って、誰?」
お兄ちゃんが首を傾げた。
私も知らない。