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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第五章 汚屋敷の兄妹
127/130

127.別れ-兄

 「後は畳四枚だけで終わりなんだよな。じゃ、俺達もう行くよ」

 「今までありがとう。……元気でね」

 俺と真穂は、揃って頭を下げた。

 藍ちゃんが意外そうな顔で聞く。

 「あれ? お昼食べて休憩してからじゃないの?」

 「早けりゃ今夜にはオヤジ達、戻ってくるし、もう行くよ」

 「落ちついたらメールするね。じゃあ」

 「そっか。元気でね」

 「風邪引くなよ」

 「幸せになるんだぞ」

 口々に別れの言葉が交わされ、俺達は何度も頭を下げて出て行った。

 屋敷神様にもご挨拶する。小さな祠はあたたかい光に包まれていた。

 もう二度と会わないのに、ゆうちゃんは何も言わず俺達を見送った。


 分家に置いていた荷物をまとめて、真穂に予備のヘルメットを渡す。

 叔母さんに昼ご飯を断って、別れを告げる。

 「真穂ちゃん、こっちは心配いらないから、受験、頑張ってね」

 「うん、ありがとう。落ちついたらメールするね」

 叔父さん、コーちゃん、政晶君と握手を交わして、雪道にバイクを走らせた。


 高速のサービスエリアでジャンクな昼飯を食べて、俺達はひたすら母さんの待つ街を目指した。万が一にも知り合いに行き先を知られないように、時々下道に降りて、わざと車が通れない細い道を走る。

 十駅離れた場所でバイクを止めて、電車で七駅移動。ショッピングモールの中を徒歩で通り抜けて、何カ所か店の中を通り抜けた。

 二駅分をバスに乗って、残り一駅分はタクシー。

 そうやって遠回りをしたから、母さんのアパートに着いたのは、夜遅くになってしまった。


 母さんは、起きて待っていてくれた。

 「おかえり」

 「ただいま」

 目のレンタル魔法は今日まで。母さんも真穂も、輝いて視えた。

 母さんの入院から初めての親子三人が、水入らずで過ごす夜だ。

 三人でコタツを囲んで、母さんの年越しそばを食べながら話す。

 古くて物が少なくて、裕福な部屋ではないけど、雑妖は居ない。

 除夜の鐘が、澄んだ音色を響かせて、今年の穢れを打ち祓った。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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