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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第五章 汚屋敷の兄妹
123/130

123.決定-妹

 「まぁでも、ニートが一瞬でも働く気になったのは、よかったよな」

 お兄ちゃんが、ヨカッタ探しをした。


 それくらいしか、いい事がない。


 「優一君、本当に二度とここに戻らないくらい、必死な気持ちで帝都に出て、向こうで就職するのね? 本気で働く気になったのね? 頑張れるのね?」

 叔母さんが、噛んで含めるような口調で聞く。


 ゆうちゃんは、しどろもどろに答えた。

 「いや……まあ、オヤジ達がクロだったら、の話だ。もし、あれが本当にオ……オレのかっ……母ちゃん……で、あいつらが犯人だったら、オレはこんなクソ田舎捨ててやる。あんな家、継いでやらん。他所で働いて他所者になってやる!」

 「政治(まさはる)経済(つねずみ)宗教(むねのり)……叔父さんからのお願いだ。一年……いや、半年でも三カ月でもいい。優一を下宿させてやって、帝都で就職活動させてやってくれないか? 家賃と食費は叔父さんが立替えるから……置いてやって下さい。この通り……」

 米治叔父さんが、上座からマー君達の横に移動して、土下座した。


 「叔父さん、顔をあげて下さい。米治叔父さんは、ゆうちゃんの親じゃなくて、藍ちゃんと紅治(こうじ)くんの親です。二人の学費に専念して下さい。米治叔父さんが犯人でないなら、そんな事しないで。ウチはそんな筋の通らないお金は要りませんし、変な方向の協力はしたくないし、責任も持てません」

 ツネ兄ちゃんが淡々と拒否した。


 そりゃそうだ。


 「あーでも、ゆうちゃん本人と、じいちゃん、ばあちゃん、豊一(とよかず)叔父さんの誰かが、ちゃんと頭下げて金出すって言うんなら、相談には乗るよ」

 「あの者は殿下に対して敵意を抱いております。不敬罪の償いも致しておりません。不穏な(やから)を殿下のお住まいに同居させる事は、承服致しかねます」

 マー君が、ゆうちゃんの顔を見てニヤニヤ言う。

 双羽さんは静かに怒っていた。


 黒猫のクロエさんは、ぬいぐるみ遊びをやめてノリ兄ちゃんの顔色を伺っている。

 「就職活動ってどんな事するの?」

 ノリ兄ちゃんの質問に、社長のマー君が最近の就活事情も交えて答えた。

 「ふーん。じゃあ、政治(まさはる)達がいいんなら、僕も別に構わないよ」


 マー君の説明で、何か納得したらしいノリ兄ちゃんに、双羽さんが異議を唱える。

 「だって、僕も大学とか病院とかで平日は留守だし、ゆうちゃんが一階の客間に泊まって、二階に来ないんならいいかなって……不敬罪とか、ずっとお母さんに、ゆうちゃんと似たような事言われてたし……どうせ僕の事なんて……面倒臭いから、もういいよ……」


 「もし、家賃と食費の支払いが(とどこお)ったり、ゆうちゃんが暴言吐いたり部屋汚したりしたら、即、追い出して、自力で戻って来られない場所に捨ててくればいいよな」

 マー君が冗談か本気かわからない事を言って、ツネ兄ちゃんに同意を求めた。

 「まあ、まだ何も分かってないし、決まってないし……」

 ツネ兄ちゃんは態度を保留した。

 双羽さんは眉間に皺を寄せて黙っている。

 「少なくとも、白黒付ける事は決まったな。じゃあ、歌道寺(うどうじ)さんに相談して、祭壇のお(こつ)を引き取って貰えるように、頼んで来よう」

 米治叔父さんが話題を変えて座敷を出て行き、親族会議はお開きになった。

真穂視点、一旦終了。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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