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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第五章 汚屋敷の兄妹
122/130

122.意欲-妹

 米治叔父さんが重々しく口を開く。

 「俺は宗教(むねのり)君の魔法の力を借りてでも、あの三人に当時の事を確認した方がいいと思う」


 冷めきった番茶をすすって口を湿らせ、言葉を続ける。

 「何も知らないなら、誰の仕業かはわからんが、少なくとも家族の潔白は証明される。知ってて黙ってたなら、身内の恥だが近所の人達と、晴海さんの実家にも知らせて、晴海さんの名誉を回復せにゃならん。間男と駆け落ちしたふしだらな女扱いのままじゃ、浮かばれないからな」


 ゆうちゃん以外の全員が頷いた。


 「い、いや、ちょっと待て、クロだったら、オレら犯罪者の身内で、村八分だぞ!?」

 ゆうちゃんが、慌てて反論する。

 「構わん。本当の事だ」

 「私は今県外の大学に行ってて、就職もあっちでするつもりだから」

 「俺も別に無理して農業継がなくていいって言われてるし」

 「ウチは会社組織にしてあるから、どうしてもダメになったら、田畑は他の社員さんに引き継いで、引っ越して他所に就職するから」

 分家のみんなが、口々に言った。


 「俺たちは、そもそもここに住んでないからなぁ、縁切りやすいぞ」

 「……て言うか、当時三歳児だったし」

 「僕はもうすぐあっち行っちゃうから」

 (ともえ)家の三つ子は心底どうでもよさそう。当時生まれていない政晶君は、大人の言い分に頷いてる。


 「俺、もう遠くの会社から内定出てて、研修の後、海外勤務って言われてるんだ」

 「私も、昨日言った通りよ」

 お兄ちゃんと私も、他人以上に冷たく言ってやった。

 ゆうちゃんはじっと黙っていたけど、急に閃いた! みたいな顔をして得意げに言った。

 「いや、オレ、帝都の巴家に引っ越してやって、マー君の会社で働いてやってもいい」

 「は? 何言ってんの? ゆうちゃん、アタマ大丈夫か?」

 マー君が半笑いで言った。


 なんでそんな上から目線なの?


 「優一! それが人に物を頼む態度か!?」

 米治叔父さんが掌で座卓を叩いて立ちあがった。

 みんなが叔父さんに注目したけど、すぐ、ゆうちゃんに視線を戻した。


 「ゆうちゃん、あのさ、昨日の説明、聞いてたよね? ウチ、産業ロボットのメーカーなの。

 工学部の院卒レベルの専門知識がないと正社員は無理なの。

 経理はオレと、他社での経験も豊富な年配の社員で、二人とも簿記一級持ってるの。

 事務はベテランのパートさんに来て貰ってるから、ゆうちゃんみたいな未経験者、要らないんだよ」

 「いや、それは違うだろ」

 「何が違うんだよ? それに、ゆうちゃん、掃除も皿洗いもできないじゃないか。ウチに泊まってタダ飯食って散らかし放題って、今度はウチをゴミ屋敷にする気かよ」

 「いや、そんなの、メイドさん居るし……」

 「あれはウチのメイドじゃなくて、宗教(むねのり)の下僕だ。それに自分の部屋は各自掃除するのが巴家のルールだ。宗教(むねのり)も体調がいい時は自分で掃除してる」


 何もかも他人にやらせる気だったんだ。それであんな上から目線。何様のつもり?

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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