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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第五章 汚屋敷の兄妹
120/130

120.霊視-妹

 床の間を背にした上座に叔父さん、その対面にゆうちゃん。

 廊下側の上座からノリ兄ちゃん、マー君、政晶(まさあき)君、ツネ兄ちゃん、叔母さん。

 縁側サイドの上座からお兄ちゃん、私、藍ちゃん、コーちゃんの順で座った。

 ゆうちゃんと叔母さんの間に三枝さんが立って、双羽さんと黒猫のクロエさんは、ノリ兄ちゃんの後ろに居る。黒猫は、猫用おもちゃを前足で抱えて猫キック。場の空気を気にせず、一人遊びしてる。


 かわいい。ちょっと和んだ。


 「いや、ムネノリ君の一声で令状もないのに警察動くって、ズルくねぇ?」

 「死体を見つけたら、普通に一一〇番するでしょ」

 ゆうちゃんが、沈黙に耐えられなくなったのか、余計な事を口走る。

 藍ちゃんがぴしゃりと言った。

 「あのね、僕、時々警視庁の人に頼まれて、行方不明者の捜索のお手伝いしてるの。空き家の床下とか、岸壁沿いの海底とかでよく見つかるんだよ。それでね、よく知ってる刑事さんに本家の事言ったら、ここの県警と駐在さんに連絡してくれたの」


 ゆうちゃんが震える手で湯呑みを掴んで、すっかりぬるくなった番茶をすすった。

 「いや、王族なのにわざわざ現場まで出向いて、警察犬の真似事してんの?」

 「行かないよ。お家か大学か警察署で、写真とか遺留品とか見せて貰って、生きてるかどうか視るの。生きてなさそうなら、三界の眼(さんかいのめ)の範囲を広げて周囲十キロ圏内を視るの。その人かどうかまではわかんないけど、範囲内に死体があればわかるよ」


 都会って、そんなに怖い事がいっぱいあるんだ。でも、ここに居るよりずっとマシ。


 「今回は、本家をちゃんと視る為に三界の眼(さんかいのめ)を開いたから、床下に居るのが視えたの」

 「いや…………あの……その、三界の眼(さんかいのめ)ってのは、しっ知らない奴の事まで分かるのか? 写真とかなくて……その……おっオレの……」

 ゆうちゃんの声が震える。湯呑みを持つ手も震えてる。

 何を聞きたいかわかった。

 「個人の識別まではできないよ。生きてるかどうかと、人と魔物の区別がつくだけだもん。あの人を『ゆうちゃんのお母さんだ』って言ったのは、経済(つねずみ)だよ」

 ゆうちゃんはツネ兄ちゃんを見た。


 ツネ兄ちゃんが、蜜柑に伸ばした手を引っ込めて答える。

 「子供の頃、階段で『ゆうちゃん』って呼んだり『ここから出して』って泣いてる女の人の声を何回も聞いたんだ。

 母さんに言ったら『そんな声聞こえない! 気持ち悪い事言うんじゃないの!』って殴られたから、生きてない人の声なのかなって思って。

 で、今回、宗教(むねのり)が『床下に人が埋まってる』って言うから、総合的に判断して、晴海(はるみ)叔母さんなのかもって……」


 ツネ兄ちゃんの歯切れの悪い説明に、叔母さんが暗い顔で相槌を打つ。

 「こう言っちゃ悪いんだけど、私もずっとあの家、気持ち悪いと思ってたのよ。

 何回か手伝いに行った時に経済(つねずみ)君と同じ場所で……同じ声……聞いてるし……

 ゆうちゃんのお母さんが行方不明で……

 あの場所であんな声……って事は、つまり……

 そういう事なんだろうな……とは思ってたんだけど……

 証拠も何もないから……誰にも言えなくて……」

 「母ちゃん、それで俺らに本家に行くなって言ってたの?」

 コーちゃんが目を丸くして、真知子叔母さんを見た。霊視力のある二人が同時に頷く。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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