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汚屋敷の兄妹  作者: 髙津 央
第五章 汚屋敷の兄妹
117/130

117.変身-妹

 庭にゴミの山ができていた。

 ノリ兄ちゃんが、倒れた本棚に話し掛ける。

 「ゆうちゃん、そんな所で何してるの? 風邪引くよ?」

 「えっ? ゆうちゃん、崩れたゴミの下敷きになってんの?」

 「間抜けねー」

 私と藍ちゃんは呆れてしまった。


 「黒江、本棚を除けて、ゆうちゃんを出してあげて」

 「かしこまりました。ご主人様」

 今朝のクロエさんは、スーツをきっちり着こなした執事型の「黒江」さん。琥珀色の瞳は同じで、五十代くらいの落ちついた雰囲気が漂う(いぶ)し銀系の男前。声も低くて渋い。

 本棚を()けて、ゆうちゃんのジャージの襟首を掴んで、片手で軽々と吊り下げた。

 「黒江、ゆうちゃんを降ろしてあげて」

 「かしこまりました。ご主人様」

 襟首から手を放されたゆうちゃんは、そのまま地面に座り込んだ。


 そりゃ、びっくりするよね。


 「ゆうちゃんは自分のクズさ加減に気付いて、ゴミの仲間入りしてたのかもよ?」

 「えーっ? 流石にそれはないんじゃないかなー?」

  マー君がニヤニヤ笑って、ゆうちゃんを見降ろす。私は半笑いで否定した。

 「ゆうちゃん、もうすぐ警察の人が来るから、立ち会い宜しくね」

 ノリ兄ちゃんが言うと、ゆうちゃんは一瞬固まって、全然関係ない事を聞いた。

 「いや、それより、メイドさんは?」

 「クロエ? そこに居るけど? ゆうちゃん、疲れてるみたいだし、お掃除は後でいいよ」

 「いや、掃除じゃなくって……」

 「宗教(むねのり)、ゆうちゃんは説明の時、居なかったからわからないんだよ」

 「あ、そっか」

 ツネ兄ちゃんに言われて、気が付いたみたい。

 「ゆうちゃん、黒江を見ててね。黒江、女中になって」


 ポンッ


 紙袋が割れたような音と同時に執事さんが消えて、メイドのクロエさんがそこに現れた。

 「クロエは僕の下僕なの。お掃除とか頼む時は女中の形で、他の用事の時はさっきの形で、用事のない時と寝る時は、にゃんこの形にしてるの。ホントの形も見てみる?」

 ノリ兄ちゃんに聞かれて、ゆうちゃんは反射的に頷いた。

 「クロエ、元の形に戻って」

 ポンッと言う音の後、例の猫っぽい悪魔が現れた。ホントは悪魔じゃなくて人工的に作られた魔法生物。

 「クロ、おいで。だっこしよう」


 ポンッ


 巨大な悪魔が消える。黒猫がしっぽをピンと立てて、嬉しそうにノリ兄ちゃんに駆け寄った。

 ノリ兄ちゃんが、飛びついた黒猫を抱き上げて、頭を撫でる。黒猫は琥珀色の目を細めて、ゴロゴロと喉を鳴らした。

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【関連  「汚屋敷の跡取り
ゆうちゃん視点の話で「汚屋敷の兄妹」と全く同じシーンがあります。

▼用語などはシリーズ共通設定のページをご参照ください。
野茨の環シリーズ 設定資料(図やイラスト、地図も掲載)
地図などは「野茨の環シリーズ 設定資料『用語解説17.日之本帝国』
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